フォトギャラリー



 12月の花 ランタナ
 マレーシアのキナバル山に登ったとき、麓のまちの生け垣に植栽されて黄色い花を沢山つけている灌木があり心に残った。ランタナという名は、近所の花屋さんの路地にあったのを偶然見つけて教えてもらった。このあたりでも、冬を越して春遅くに芽吹くようになったとのことであった。それで一本植えてみた。庭にあるのは、七変化と呼ばれる種で、黄色に咲いてから橙色、桃色、赤、赤紫と変化してゆくので、一つの花冠の なかにいくつもの色が交じって美しい。花期は長く夏から晩秋まで咲いている。(2007.12.1)

ランタナ、七変化(横浜)

黄色のランタナ(横浜)

 11月の花 イヌホウズキとワルナスビ
 つい先頃まで、イヌホオズキをワルナスビと思い違えていた。ワルナスビには棘があるが、イヌホオズキにはない。イヌタデ、イヌザンショ、イヌムギなど、イヌという少し貶めたような蔑称をいただく植物は多い、ニセとかワルとかをいただいていたり、モドキをつけられているのもある。ヤマ(山)椿とか、ノ(野)牡丹とか、生育している場所を示すものや、ヒメ(姫)とかオニ(鬼)で大小を表すのはまだしも、本種に比べて姿かたちは似ているが、食べられないとか、香りが落ちるとか、使いものにならないという、人の都合によってつけられているのが不憫である。勿論、人にもニセ医者、ワル餓鬼、イヌ侍というのがあるから、植物だけの事情ではないようである。(2007.11.1)

イヌホオズキ(横浜)

ワルナスビ(千代田区)

 10月の花 タマサンゴ
 毎朝、犬と散歩する道路の脇に、ホオズキのような丸い実を年中つけている低木があった。花はイヌホオズキと同じナス科で、実は緑から黄色、橙色、赤と同居している。名はずっとわからないままにしていたが、園芸店で五色トウガラシと並んで鉢植えにして売られていた。「タマサンゴ(冬サンゴ)」とあった。誰かが買って増やしたものを植えたのかもしれない。タマのつく植物はタマアジサイ、タマシダなど結構多い。庭には秋口になるとヒガンバナ科のタマスダレが白い花を一斉につける。少し遅れてヒガンバナが咲くと、あざやかな紅白の対比が楽しめる。(2007.10.1)

タマサンゴ(横浜)

タマスダレ(横浜)

 9月の花 ミズヒキ
 ミズヒキが庭に出てきたのは、何年前であろうか。庭に生えてくる草をそのままにしておくの が趣味なのである。しかし、人の歩くところは草が生えないので自ずと道になる。それで、入り 口から家のドアのところまで草の細道となった。ミズヒキは花と思っていたのがガクで、四つの うち一つだけが白い。その花穂の紅白を、慶事のときの〆として使う水引になぞらえて名づけら れたという。庭のミズヒキは姿も色もわがままな出方であるが、右は四十年来の友人たちと富士 宮の白糸の滝に遊んだとき、滝の飛沫を浴びながら撮ったもので鮮やかな色合いであった。(2007.9.1)

ミズヒキ(横浜)

ミズヒキ(白糸の滝)

 8月の花 オトメカズラとヤブガラシ
 ヤイトバナはところかまわず絡みつくので、庭ではヤブガラシと並ぶ嫌われものである。しか し、花は小さいが存外可憐でオトメカズラという美しい名をもっている。その一方で、ヘクソカ ズラというあまりな名もある。たしかに鼻を近づけると強烈な匂いがする。根は塊茎になってい てこれも臭いが、これを叩いてつぶし炭火で焼くと、酒肴として絶品であると聞いたことがある。 「ヘクソカズラのタタキ」というのだが、半信半疑でまだ試したことはない。(2007.8.1)

オトメカズラ(横浜)

ヤブガラシ(横浜)

 7月の花 ザクロの花
 初夏に咲く木花は少なく、柘榴のほかには木槿、夾竹桃などであろうか。柘榴の花は朱よりも 赤に近い色で、緑の葉の中に咲いていると、まさに紅一点の趣がある。萼を戴いた実の形も面白 く、静物画にも好んで描かれているようである。秋になって果皮が割れ、中の果肉がのぞくのは アケビと同じである。種は意外に大きく、まわりを被っている果肉は薄い。酸っぱくてうす甘い 味で、お腹を満たしてくれるわけではなかったが、それでも子どものころよくとっては食べると いうよりしゃぶったものである。(2007.7.2)

柘榴の花(横浜)

柘榴の若い実(横浜)

 6月の花 グズベリー
 梅の木の下にグズベリーの木の繁みがある。この木は信州から、知り合いの農家の畑脇にあっ たものを、株分けしていただいてきたものである。花は小さく、花びらが下を向いて半開きのま まなので地味で目立たないが、縞の入ったビー玉のようなまるい実をつける。熟すと赤くなり食 べられるが、透き通った緑の実も一緒に採ってジャムにする。枝にびっしりと棘があるので、手 を差し入れて実を採ろうとするとひどい目にあう。採った実の蔕(へた)を一つ一つとるのが大 変であるが、ジャムにしたときの美味しさがあるので苦にしたことはない。この時期、ウメとスモ モもジャムにするが、グズベリーのジャムが一番である。(2007.6.1)

グズベリーの花(横浜)

グズベリーの実(横浜)

 5月の花 ユズの花
 ユズはミカン科で花は五弁である。切れ長の白い花びらは厚みがあり、柑橘類特有の爽やかで あまい香りがする。庭のユズは本ユズではなく一歳ユズで、木は大きくならないし実も小ぶりで香りも いまひとつである。しかし、実の数だけは使い切れないほど多くつく。あおい実が黄色く熟すの は12月に入ってからで、冬至の柚子湯にはふんだんに入れる。ユズの皮は香味に、中身は絞って ユズ酢にすると冬の鍋料理には重宝である。あと、春先まで枝に残った実はすべてとって絞り、 水で割るとさっぱりとしたユズジュースとなる。夏ミカンの木が近くにあり、やはり同じ頃に花 をつけるが花の形もよく似ている。(2007.5.1)

ユズの花と蕾(横浜)

夏ミカンの花(横浜)

 4月の花 カリン
 カリンの花は美しいピンクの小さい花である。大木になる木で実も大きいが、花は可憐である。 紡錘形の若い実はまだあおく紅を刷いているが、秋に黄色く熟すと強い芳香を放つ。玄関に一つ でも置こうものなら、部屋中に香りが満ちる。実は食べることはできないけれども、輪切りにし て砂糖をまぶし焼酎に漬けるとカリン酒で、のどの痛みをやわらげる咳止めの特効薬である。信 州で地梨酒というのがあり、草木瓜(クサボケ)の実を地梨といって同じように漬ける。ボケの 実も香りがカリンとよく似ていて、同じ薬効があると聞く。カリンもボケもバラ科の花らしく花 びらの形が美しい。(2007.4.1)

カリンの花(横浜)

カリンの実(横浜)

 3月の花 ハコベ
 暖かくなると、緑なすはこべは萌える。実は正月の七草の時にも、地面に張りついたように葉 を出していて、少し摘んで七草粥に入れる。三月になると、やわらかく葉茎を伸ばしふんわりと 繁みをなして盛り上がる。子どものとき、飼っていた鶏の餌に毎朝ハコベを採りにゆくのが、わ たしの役目であった。神社の裏にある松林の中がハコベの宝庫で、いつもそこに行ったのだが、 ある日黒いヘビがピョンと跳びだしてきて追いかけられたことがある。カゴを放り出して逃げた が、あれはカラスヘビであったろうか、マムシであったろうか。ミドリハコベは茎も緑であるが、 コハコベの茎は紫がかった褐色で、花も葉もやや小ぶりである。(2007.3.1)

ミドリハコベ(横浜)

コハコベ(横浜)

 2月の花 フキノトウ
 立春を過ぎ、二月も半ばになるとフキノトウが顔を出す。そうなれば、春はもうそこに来てい る。庭には、毎年一回天ぷらにできるくらいのフキノトウが出る。野山にあるフキノトウの強い 香りはないが、それでも春の香りを一番に運んでくる。天ぷらのほかに、フキ味噌にする。豆腐 のみそ汁などにきざんで散らすと、いっそう香りが立つ。三月になり花穂が伸び薹立ちして花が 開いても、まだ十分に食べられる。信州では春が遅く、標高千メートルの山小屋のまわりでは、 桜の咲く四月下旬から五月の連休あたりまで楽しめる。(2007.2.1)

フキノトウ(横浜)

薹立ちしたフキノトウ(横浜)

 1月の花 雪の花
 冬になると、寒椿、ヤブツバキ、サザンカなどの紅い花や、千両、万両、ウメモドキなどの赤 い実が目立つようになる。彩りの少なくなった冬の庭の楽しみは、やはり雪である。冷え込んだ 深夜雪が降ると、朝一面真っ白な庭に雪の花が咲く。葉を落としている灌木の枝の芽がふくらん でいるところや、小枝の分かれ目に雪が積もって、あたかも花のような風情を見せるのである。 朝陽があたってはらりと落ちるまでの短いいのちであるが、それゆえに目を惹く。また、朝窓を 開けた先に雪をのせて重くしなった枝の間にのぞく、ワビスケの紅い花も目が覚めるように美 しい。(2006.12.29)

雪の花(横浜)

雪のワビスケ(横浜)

 木魂ギャラリーの中に、フォトギャラリーを開設しました。「今月の花」では、原則として毎月一つだけ 取りあげるつもりです。読者諸兄の目をいささかなりとも楽しませることができれば幸いです。文と写真 は社主の鈴木和男が担当します。(2003.3.15)



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