3月の花 母子草
ハハコグサは春の七草の中に入っているゴギョウのことである。御形と書くが、オギョウとも読む。草餅に今はヨモギを使うが、昔はこちらを使っていたという。荒れ地のどこにでも生える強い草で、花茎の先に黄色い粒粒の花がかたまって咲く。名前の由来は、その花をいただく葉や茎が白い綿毛をまとい、母が子を抱くように見えることからという説がある。同じキク科で父子草というのもあるが、花も茎も葉の付き方も違い似ていない。(2021.3.1)

「今月の花」は2003年3月に始めたので、気が付いてみると十八年が経ち十九年目に入ったことになる。よく持続したとも言えようが、あっという間でもある。実際八十年を生きてみれば平凡な人生といえども、人との出会いが織りなすタピストリーのようにエピソードに満ちたものであるが、最後に振り返ってみればそれも一瞬であったと言ってもよい。しかしながら、このたまゆらの中で出会った、美しいものを書きとどめておくのは、この世に生きたもののなにか「つとめ」のような気もするのである。長生きだけを偉ぶってはいけないのは、そのように生きた先人の記録の轍があるからである。その轍がどこで途切れようと、それがいのちなのだと教えてくれるのである。小生は、なぜか子どもの頃から「花」が好きであった。もちろん、木も草も親しく感じるのだが、花は咲いて散るという宿命を持つ。いつでも会えるわけではない、その花に出会うということが意味を持つ所以である。「年々歳々花亦同じ、歳々年々人同じからず」であるが、この楽しみは何物にも換えがたいのである。

ハハコグサ(横浜)

ハハコグサ(横浜)