10月の花 キキョウとオミナエシ
 春の七草が、若菜を食膳に供して春の色と香りを楽しむものとすれば、秋の七草は山近い里の秋の野に 置いてその姿の風情を愛でるものであろうか。一面に露を置いた葉や花に裳裾を濡らしてものの哀れを詠 んだ万葉の風を真似て、信州の山里に遊んだことがある。萩や葛、ススキは周りにあって探すということ はないのだが、撫子や藤袴はすっかり見えなくなってしまった。北八ヶ岳の東山麓、標高1000メートルのとこ ろにある山小屋に行った時のことで、その南斜面に見事に色づいた吾亦紅があり、思わず歩み寄った脇に女郎 花と桔梗が仲良く顔を寄せて咲いていた。標高1000メートルともなると、朝夕の冷え込みで里より一足早 く、8月の半ばには秋が紛れ込む。沖縄の友人によれば、沖縄の秋は短く季節暦で10月中旬から11月。10 月8日頃の寒路の候に、大陸の高気圧から吹き出す季節風が小雨をもたらすことがあり、そのとき九州南 端からサシバの大群が渡るので、その雨をサシバのシーバイ(小便)と呼んで秋を感じるという。(2003.10.1)

オミナエシと桔梗(八千穂村)

横浜のススキ