9月の花 ヒガンバナ
 彼岸花は秋のお彼岸の頃に毎年二日と違わず開花するので、この花の日の長さを測る正確さにはいつも感 心する。子どものころ田舎にいて、畑の脇にある墓地から畦道までを真っ赤に埋めて咲くこの花に、かすか に異界を感じてたじろいだ思い出がある。お供えの花でもあり、救荒食としても植えられたのだと聞く。球 根には毒があり、すり潰して何回も水に晒して澱粉をとったという。庭の片隅の鉢に、十年くらい前に相模 川の河原に捨てられていた球根を三つほど拾ってきて植えておいたのだが、植え替えもせずそのままにして いたら分球して15本ほど花をつけた。曼珠沙華と憶えていたが、赤い花という意であるのを知ったのは最近 である。よく見ると花弁と花糸が実に繊細で美しい。年を経て、どんな花もわけへだてなく見られるように なったのであろうか。沖縄には赤い彼岸花のほかに、ショウキズイセンという黄色い彼岸花があるという。 (2003.9.1)

横浜のヒガンバナ

沖縄のショウキズイセン(宮城邦昌氏撮影)