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 12月の花
 寒椿は花期が長い。11月の半ばから咲き始め、年を越えて2月まで咲きつづける。サザンカと ツバキの交雑種であるという。交雑が種を越えた掛け合わせを言い、交配は同種間の掛け合わせ を言うらしい。様々な品種が作り出されるのは人の手によるらしく、この種だけのことではある まい。アサガオやチューリップの珍らかな花の形や色を生み出すために、多くのエネルギーが費 やされたが、いつの時代にも新しもの好きというものがあり、江戸にあった黄色のアサガオが忘 れられ、近ごろは新顔の黄色のコスモスがもて囃されているようである。近所に、紅と白に咲き 分けるヤブツバキがあるが、これは交配種なのであろうか。それとも、交雑種なのであろうか。 (2006.12.1)

カンツバキ(横浜)

ヤブツバキ(横浜)

 11月の花
 街なかの蕎麦屋に、新ソバの貼り紙が目立つようになった。ソバ通ならば、食してみたくなる のが人情というものであろう。キチ印のソバ好きは、街の蕎麦屋にあきたらず、山の奥深くに一 日限定20食の手打ち蕎麦屋があると聞けば浮き足立つようなのである。それほどではないにして も、信玄の隠し湯ではないが、好みの蕎麦屋を何軒かもつのも悪くはあるまい。信州の山小屋に 行く途中、長坂と清里の手前にある蕎麦屋に寄るのが楽しみになっているが、もう一つ誰にも教 えない隠し蕎麦屋が山梨にある。左は長坂の蕎麦屋が自家栽培しているソバ畑。右は信州の山小 屋の下で見た赤花のソバ。地元の人は味の差はないという。(2006.11.1)

ソバの花(信州、長坂)

ソバの花、赤花(信州、佐久穂)

 10月の花
 アザミの葉には強い棘があるが、棘のある植物は意外に多い。サボテンしかり、バラしかり。 やはり身を守るための知恵であろうか。山菜でミヤマイラクサという、そのトゲに触れると皮膚 が腫れ上がるものがあるが、春先に出たばかりの若菜はトゲの針もやわらかく、オシタシにする と美味であるという。アザミも、雪の深い山里では春の雪解けを待ちきれずに顔を出す、ワラビ やゼンマイなどとともに立派な山菜の一つで、若い茎をとって塩漬けにして次の冬に備えたと聞 く。左の写真は北八ヶ岳山麓にある山小屋の草屋根の上に咲いていたもの。右は、高知出身の知 人が送ってきてくれたハマアザミ。葉は肉厚で光沢がある。室戸岬の岩場に咲いていたという。 (2006.10.1)

アザミの花(佐久穂町)

ハマアザミの花(高知、清水祺子氏撮影)

 9月の花
 ウリ科の花はだいたい黄色の花を咲かせる。花の大小の差はあれ五弁であるが、つける実の形 がスイカ、カボチャ、キューリなどそれぞれ特徴的である。栽培されて食されているものは、や はり野菜としておいしくファンが多いからであろう。ズッキーニ、ゴーヤなどが市場に出てきて 市民権を得て久しいが、ヘチマの若いのまで食べるようになったのは、やはり沖縄からの影響で あろうか。ヘチマは水に漬けてくさらせ繊維だけになったら干して、食器洗いやお風呂で躰を洗 うのに使ったものである。あと、しっかり根を張らせてから地上30センチほどのところで茎を剪 って、その先をビンの口に差してヘチマ水をとった。化粧水として流通したことがあったが、そ れもはるか昔のことである。(2006.9.1)

ゴーヤの花(横浜)

ヘチマの花(横浜)

 8月の花
 真夏の炎天下に咲いて目立つ花には、ノウゼンカズラ、ヤブカンゾウ、ヒメヒオウギズイセン など、朱色の花が多い。信州に行くと、どの農家の庭先にも見事な幹と枝振りのノウゼンカズラ があり、鮮やかな朱の花房が揺れている。隣家から隣家へと株分けをして広まったのであろうか。 庭の片隅にあるヒメヒオウギズイセンは、はじめヒオウギランと思い違えていた。これも日照を 必要としているが、驚くほど繁殖力が強い。伊豆の知人のところにタケノコを掘りに行ったとき、 薮に捨てられていた小さな球根を拾ってきたものなのであるが、木の下でもしぶとく花をつけて 楽しませてくれている。(2006.8.1)

ノウゼンカズラ(横浜)

ヒメヒオウギズイセン(横浜)

 7月の花
 最近あちこちの庭先に目立つようになった花がある。筒状の大ぶりな花をいくつもぶら下げて いる。キダチチョウセンアサガオと調べはついた。エンジェルズ・トランペットというしゃれた 名前もある。この種類は上向きに咲くのもあり、白、ピンクなど花の色も多彩である。家の近く の道路の側道帯に誰が植えたものか、チョウセンアサガオの株があり、夏の朝に白い花をいくつ も咲かせている。しかし、学名でダツラとつくこの種の花は毒草である。かの華岡青洲が麻酔の ために調合した曼陀羅華は、このチョウセンアサガオと思われる。これも、紫色で八重のものが あり、南大東島から友人が写真を送ってきてくれた。ヤエチョウセンアサガオと呼んでいるよう である。(2006.7.1)

チョウセンアサガオ(横浜)

ヤエチョウセンアサガオ(南大東島)

 6月の花
 隣りにある畑に毎年ジャガイモが植えられている。それほど多くは作付けされていないので、 自家用なのであろう。6月になるとうす紫の花をつける。花びらの形と黄色い雄しべの付き方が、 同じナス科のトマトやナスの花と似ている。南米アンデスの高地からヨーロッパに渡り、日本へ はジャカルタを経由して来たという。フランス宮廷の貴婦人方が、この花を競って身に飾ったと いう話は有名である。出身地のアンデス地方では、夜凍らせたものを昼間にもどしては踏んで、 乾燥させて水分をとばして保存食にする。この乾燥ジャガイモはチューニョと言って、こちらの 食文化には欠かせない。「チューニョの入っていないスープなんて、愛のない人生みたいなもの」 という諺があるらしい。(2006.6.1)

ジャガイモ畑(横浜)

ジャガイモの花

 5月の花
 マテバシイの花は小さい。花穂が立つのは栗の花に似ている。近くの側道に街路樹として何本 も植えられているが、常緑樹で大きく枝を張り、濃緑の葉を密度濃くつけるので、交通量の多い 道路脇に適していると思われたのであろうか。典型的な照葉樹の一つであるが、この実のドング リは大きく、他のドングリとちがい渋みが少ないので、縄文の時代から食されていたという。茹 でるだけでも食べられるが、粉にしてからクッキーに焼き上げ、縄文クッキーと称してお土産に 売っているところもある。ドングリは子どもも大人も好きなようでコレクターも多く、何種類も の図鑑が出ていて版を重ねている。(2006.5.1)

マテバシイの花(横浜)

マテバシイの実

 4月の花
 同じ所に住んで35年にもなると、植えた木やら実生の木がどんどん大きくなって二階の屋根を 越してしまう。ケヤキ、イチョウ、ヒバ、モミ、クスノキなど、大木になる木はもちろん、ビワ、 ウメ、スモモ、サクラ、エゴの木なども枝をひろげ、夏のわが家はすっぽり緑におおわれる。ま わりが高層のマンションになってしまったので、この一郭だけ谷間の中のグリーン・パークとい う観がある。この間、クーラーをつけることもなく過ごせたのは、窓を開け放てば緑を渡る風が ひんやりと流れ込んでくるからである。大きくならない木も植えた。ヤマブキ、カンツバキ、ク チナシ、サツキ、ツツジ、沈丁花など。ドウダンツツジも何もなかった頃に植えたものの一つで ある。花の形が面白いのと、紅葉の姿が好きだったからである。(2006.4.1)

ドウダンツツジ(横浜)

ドウダンツツジの紅葉

 3月の花
 家の近くに「綱島桃の里」という公園がある。横浜の綱島地区は一時桃の産地として知られ、 「日月桃」の名で全国に出荷されていたという。桃畑もほとんどは宅地になってしまったが、昔 庄屋をつとめていた農家がその種の絶えるのを惜しんで桃畑を残していた。自分たちの住んで いる足元を見直すという機運が全国的に広がったとき、綱島の地元の人たちが「桃の里」を復活 させようと公園を造り、桃の木を移植したのである。桃の花は女子のお祝いの節句に良く合う。 花弁が梅や桜より大きくて色も濃く、たおやかな雰囲気があるからであろうか。右は信州佐久穂 町のしだれ花桃。信州では四月下旬から梅、桜、桃などの花が一斉に咲く。(2006.3.1)

桃の花(横浜、綱島桃の里)

信州のしだれ花桃

 2月の花
 水仙は初冬から早春まで、寒い時に咲いてくれる数少ない花の一つである。二、三本切り花にし て花瓶に挿しておくと、つよい芳香でむせるほどである。春の暖かさに誘われて水仙畑で眠り込む と危険であると聞いたことがある。この芳香のなかに神経を麻痺させるものがあるのかもしれない。 水仙の英字名はナルシッサス。ギリシア神話に出てくる美少年の名に由来するエピソードは有名で、 泉に映った自分の姿に恋いこがれて死んでしまったあとに水仙の花が咲いたという。なん人かの画 家が好んで描いているが、古本屋で買ったドラクロワの画集のなかで見た記憶がある。50年近く前 のことで、その画集はどこに行ったものか手元にはない。沖縄の友人からヒカンザクラとヤブツバ キの写真が届いた。沖縄は気温20度を越え、すでに春の領分に入ったようである。(2006.2.1)

水仙の花(横浜)

沖縄、ヤンバルのヒカンザクラ
(宮城邦昌氏撮影)

 1月の花
 庭にはアシタバとミツバが自生している。といってもアシタバは何年も前にタネを蒔いたものが、 ミツバは根ミツバを買ったとき根だけを土に植えておいたものが残ったのである。アシタバはそも そも山菜であるが、栽培ものの根ミツバもやはりもとの野ミツバの姿になっている。両方とも二年 目に花を咲かせて実をつけると枯れる。何年かすると一年遅れて発芽するものも出てくるので、毎 年どの株かが実をつけタネをばらまく。それでいつも庭にある。アシタバもミツバも毎日摘んでも、 次から次と新しい葉を出しつづけてくれるので、吸い物やどんぶりものの香味に重宝している。ア シタバは冬でも新葉を出し、ミツバは枯れるが根は残っていて春一番には芽吹いてくれるのである。 (2006.1.1)

アシタバの花(横浜)

ミツバの花(横浜)

 木魂ギャラリーの中に、フォトギャラリーを開設しました。「今月の花」では、原則として毎月一つだけ 取りあげるつもりです。読者諸兄の目をいささかなりとも楽しませることができれば幸いです。文と写真 は社主の鈴木和男が担当します。(2003.3.15)



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