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 今月の花 寒牡丹
随分前のこと、上野の何かの展覧会に行こうとしたのだが、あまりの混雑に諦めて上野公園から不忍の池に降りて行ったことがある。途中に上野東照宮があり、その脇に牡丹園があった。寒牡丹の展示をしていて、この時期にどうしてと思って入ったことがある。牡丹は晩春のものと思っていたのだが、春と冬に咲く二季咲きのものがあるとは知らなかった。寒さよけのために三角帽子の藁の寒さ除けで囲われているのが珍しかった。その時は、なにか季節外れの気がして写真も撮らなかった。それがずっと気になっていたのだが、以前連句の吟行に行ったことがある向島百花園で、寒牡丹の開花の知らせがあった。それで久しぶりに行ってみた。園内はまだ梅の蕾もかたく、冬枯れであったが、寒牡丹が紅白植えられていた。

この号が二百四十号で、満二十年となった。長いようでもあったが、あっという間のような気もする。過ぎてみれば、万事このようなものであろうか。まわりがすべて畑だった家のまわりもどんどん家やらマンションが建ち、荒れ地や野原が無くなって行った。我が家の庭の一角を、多様な雑草を楽しむ庭と称して粋がって放置しているが、それも強い草がわがもの顔に広がりつつある。まずは適当に付き合ってゆくしかあるまいと思う。と、観念したところで、この「今月の花」も一区切りとし筆を置きたいと思う。(2023.2.1)

寒牡丹、赤(百花園)

寒牡丹、白(百花園)

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 1月の花 金柑と柚子の実
サザンカが咲き終わると、庭の花木は寒椿だけとなる。草花ではといえば、寒さに強いヴィオラが庭の縁を飾る。あとは実の生る木で、山法師の赤い実が落ち始めると、柚子、金柑の実が色づいてくる。十年ほど前に植えた金柑の木が、枝を伸ばしてたくさんの実をつけた。たくさん実をつけると、ユズもそうだが実が小ぶりになるのは仕方ない。砂糖で煮てもよいが、ジャムにしてみようかと思っている。今年はユズが裏年で、あまり実をつけなかった。そのかわり、十五個ほど生った実は大きく膨らんできた。(2023.1.1)

キンカンの実(横浜)

ユズの実(横浜)

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 12月の花 
ヨモギと言えば早春の薫り高い野草で、先ずは草餅を思い出す。茹でたヨモギの葉を搗きこんだ餅は、子どもの頃からなじみ深いものであった。キク科の多年草で、蓬生のと言われるほどどこにでも繁茂する。全国通津浦々で見られる身近な野草であるが、若葉を積んだ後の姿は誰も気にかけずにいるのではないだろうか。小生もほとんど気にかけていなかったのでるが、たまたまヨモギを摘んだことを思い出して、連句の付けを詠んだことがある、それで、ヨモギにも花が咲くはずであり、まだ見ていないことに気がついた。秋に開花とあるので、先日鶴見川の川岸を通るときに探してみた。それが、探すほどもなくあるわあるわススキやクズに混じっていたり、路際に生えているのはほとんどヨモギであった。若葉の頃とは似ても似つかぬ様子であった。ひょろひょろと伸びた花穂に、なんとも地味な花をつけていた。 (2022.12.1)

ヨモギ(横浜)

ヨモギの花(横浜、鶴見川)

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 11月の花 金魚草
金魚草は名前が可愛らしい。花穂が立ち、花をいっぱいつける。ゴマノハグサ科で同じジギタリスと花のつき方は似ているが、花の形は違う。ジギタリスは筒状の花で下向きにつくが、金魚草はやや上向きにつき花弁は幾重にも重なる。名前に金魚がついているので、花の形が金魚に似ているからと思っていた。秋の半ばに近くの園芸店に行ったとき、お店の人が丁度金魚草の鉢を並べているところであった。花期が十一月から五月と書いてあるので不思議に思い、聞いてみたところ耐寒性があるという。ついでに、どこが金魚に似ているのか聞いた。花弁の形が、尾びれが大きい「琉金という金魚の尾のひらひらに似ているでしょ」とのことであった。一鉢もとめて帰り、調べてみた。植物図鑑には花期は春とあり、『十七季』という季語辞典では、仲夏の季語で、花を「つまむと金魚の口のように開閉する」とあった。注目しているところは違っているが、それぞれ金魚の形を見ているのは確かである。(2022.11.1)

金魚草(横浜、園芸店)

金魚草(横浜、園芸店)

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 10月の花 鶏頭
ケイトウの花は名前の通り、雄鶏の鶏冠(とさか)そっくりである。ヒユ科とは知らなかった。アカザ、ホウキグサ、ホウレンソウなどの仲間である。この三つの仲間は花の付き方が似ているが、ケイトウは随分違う。近所にある一画は、家が取り壊されて更地になっていたが、あっという間に草ぼうぼうの荒れ地になり、その中に以前は庭であったと思われるところに、丈の高い草に交じって色鮮やかな鶏頭が咲いていた。一度苗を買って庭に植えたことがあるが、土が合わなかったせいかあまり背も伸びず、花も大きくならなかった。近頃は、昔のタイプのケイトウは人気がないらしく、園芸店でも見なくなった。かわりに羽毛鶏頭というあまり大きくならず、花の色の鮮やかな園芸種の鉢が並んでいた。(2022.10.1)

ケイトウの花(横浜)

羽毛ケイトウの花(横浜、園芸店)

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 9月の花 鳳仙花
ツリフネソウ科の鳳仙花は子供のころから身近な花で、何処の庭にもあった。実が熟すと莢がはじけ芥子粒のような種を飛ばす。ちょっと触って、ポンとはじかせるのが遊びであった。女の子の方は、赤い花びらを爪にこすりつけて爪を染めていた。「爪紅(つまべに)」というのは、今でいうマニキュアである。四十年ほど前には裏の庭にも鳳仙花があったのだが、木が大きくなって日を遮ったせいか、いつの間に姿を消して久しい。思い立って園芸店で尋ねたら、この頃は出まわることはないという。それで、花の種コーナーに一袋残っていた種を買った。小さなプランターに播いたのが七月のはじめで、やや遅かったのだが、発芽して順調に大きくなり立秋を過ぎて花をつけた。(2022.9.1)

ホウセンカの双葉(横浜)

ホウセンカの花(横浜)

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 8月の花 浜木綿
七年前になるが、沖縄の友人と石垣島を訪ねた。一つは、以前から石垣島に行きたかったのと、友人の気象台の先輩である人とお会いしたかったことである。もう一つは石垣島の最高峰である於茂登岳に登るためであった。その年に南アルプスの塩見岳に登る予定があって、その体慣らしの意味もあった。石垣島は明和の大津波で、津波が七十メートルも谷を登って津波石を押し上げた歴史がある。海岸にもいくつも大きな津波石が点在している。友人と先輩は津波石の研究者でもあった。島中どこにでもバナナ、パパイアなど実のなる木があった。石垣島北部の明石の海岸を探索していて、林から浜に出るところに浜木綿が咲いていた。(2022.8.1)

ハマユウの花(石垣島)

ハマユウの蕾(石垣島)

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 7月の花 六条万年草
十余年前のことであるが、通路の脇のレンガで仕切られた、丸細い一画にブルーベリーとイヌツゲを植えた。そこに、多肉質の葉で苔のような植物がはびこり、びっしりと小さな黄色の花をつけた。蛍が出る頃なので螢草などと勝手に名前をつけたが、螢草(ほたるぐさ)は露草のことでツユクサ科、螢草(ほたるそう)と読めば別種のセリ科の野草であった。それがいつの間にか、龍の髭という強い草に取って替わられてなくなった。ところが、その黄色い花のかたまりが端の方にまた出てきた。グーグル・レンズで写真に撮り検索すると、「六条万年草」とある。初めて聞く名前であるが、調べてみると世界中で見られるセダムという種の一つということであった。(2022.7.1)

六条万年草(横浜)

庭のコーナー(横浜)

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 6月の花 ブラシの木
英語名は"bottle brush"で、名前の通り、花の形が壜の中を洗うブラシのようである。赤花のものを金宝樹といい、白花をシロバナブラシノキというらしい。フトモモ科で大木になるとあった。近くの園芸店で蕾から咲き始めているのを見つけたが、公園でも時々見かける。随分前になるが関西に旅行に行ったとき、どこの庭園の池だったか忘れたが、池の縁から大きく水面に張り出したブラシの木の大木が満開で、水面が真っ赤に映えていたのを覚えている。(2022.6.1)

ブラシの木、つぼみ(横浜、園芸店)

ブラシの木、花(横浜、園芸店)

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 5月の花 ケマン草
華鬘草と書く。仏殿の装飾具の形に因んだ名前とあった。花がアーチ状に列をなして垂れ下がる。鯛釣り草の別名があるように、鯛が釣り下がっているようにも見える。向島の百花園に連句の吟行で行った時に初めて見て、変わった花姿で印象に残った。ケシ科で赤花と白花がある。同じケシ科のムラサキケマン(紫華鬘)は、身近な野草でどこででも目にすることができる。近くの荒れ地で植生遷移が起きて、一面ムラサキケマンで覆い尽くされたことがあった。こちらは紫花と白花である。黄花もあると聞くが、まだ見たことがない。(2022.5.1)

ケマンソウ(向島、百花園)

ムラサキケマン(信州、佐久穂町)

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 4月の花 オカメ桜
神田神保町は本屋の立ち並ぶ靖国通りの一本裏に、すずらん通りとさくら通りがある。本屋や画廊、食べ物屋などが混在する、いかにも神保町らしい雑多な街並みで、二十年前はこちら側に事務所があった。駿河台下から神保町口に抜けるすずらん通りは、すずらんの形の街灯がかかったゲートアーチがある。ところが、白山通りを渡って専大交差点口に抜けるさくら通りには、角型の街灯とさくら通りを示す標識板しかない。さくら通りのさらに一本裏にいたのだが、迂闊にもなんでさくら通りというのか考えていなかった。ところが、入り口と出口にオカメザクラが二本、向かい合わせに植えられていたのに今頃になって気が付いた。カンヒザクラとマメザクラの交配種というから早咲きで、三月中旬には満開であった。(2022.4.1)

オカメ桜(神保町口)

オカメ桜(専大口)

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 3月の花 
先日、大倉山公園の梅林に散歩に行った。何十年か前に行った時は人出も多く、花の下でポーズをとったモデルを囲んでの写真撮影会などで賑わっていた。この梅林は早咲きのものから遅咲きのものまで、種類も多く植えられていて、一月から三月まで、いつ行っても楽しめるようになっているという。大体は紅梅が早く白梅が遅いらしいのだが、どちらも咲いていた。紅梅では「紅千鳥」「八重旭」「淡路枝垂れ」、白梅では「冬至梅」「野梅」「玉垣」などで、「白加賀」が蕾を大きくふくらませていた。(2022.3.1)

梅、紅千鳥(横浜、大倉山)

椿、冬至梅(横浜、大倉山)

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 2月の花 椿
ツバキ科の花は、椿、寒椿、山茶花、侘助など庭にあるものをとり上げてきたが、園芸種など種類も多い。先日久しぶりに散歩がてら園芸店に行った時、椿の小さな苗木があった。挿し木であろうか、丈が20センチほどしかないのに花をつけていた。ひとつは真紅で「紀州雲竜」、もうひとつはピンクで「意宇の里」と名札がついていた。「意宇」は聞きなれない言葉なので調べてみると、「おう」と読み、出雲の国にあった地名という。ツバキはサザンカと違い、散る時は花ごと落ちるので、それを嫌う向きもある。歳のせいかどうか分らないが、木の下いっぱいに散り敷いた様も風情があると思うこの頃である。

今回で「今月の花」は丸十九年となった。六年前の丸十三年の時も書いたのだが、それだけ自分もまた年をとったということでもある。その時は、あと二年などと言っていた。あまり先のことは言えなくなった歳になったが、ここまで来たのであと一年やってみようと思っている。(2022.2.1)

椿、紀州雲竜(横浜・園芸店)

椿、意宇の里(横浜・園芸店)

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 1月の花 西洋桜草(プリムラ)
年末から正月にかけて、園芸店はシクラメンやベゴニアなど冬から春に咲く花や、縁起物のセンリョウ、マンリョウ、福寿草などでいっぱいになる。その中で、いかにも西洋の花壇に合いそうな花が並べられていた。「ジュリアン」とあったが、調べてみると「プリムラ・ジュリアン」が正式名でサクラソウの仲間という。プリムラは日本名西洋桜草であるが種類も多く、大体は園芸種のようで日本の桜草とはずいぶん感じが違う。ジュリアンにも色々あり、ジュリアン・ブライダルという品種などバラの花に見紛うものもあった。(2022.1.1)

プリムラ・ジュリアン(横浜・園芸店)

プリムラ・ジュリアン・ブライダル(横浜・園芸店)

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12月の花 ビオラ
ビオラは花期が長く、花の少ない冬から春にかけて咲くので、十年ほど前からずっと植えつづけている。初夏に植えたポーチュラカが秋おそくまで咲いてくれるのだが、さすがに十一月になると花は付けなくなる。それで、十一月末になるとビオラに植えかえる。初めの頃は青や紫、臙脂、白、黄色など色とりどりに植えたが、だんだんと同じ色にするようになった。その方が狭い庭には合うようなのである。今は、青紫のビオラに統一している。庭の縁取りの煉瓦の色にもよく合う。(2021.12.1)

ビオラ(横浜)

ビオラ(横浜)

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 11月の花 ツワブキ
庭の隅にコンポストを置いている。その脇からツワブキがつぼみを付けた花茎を伸ばして来た。先月の中旬で例年より早い。今年は彼岸花も一週間ほど早く開花した。気候変動の影響なのかどうかわからない。俳句・連句では石蕗(ツワブキ)は晩春の季語であるが、石蕗(ツワ)の花は冬の到来を告げる初冬の季語である。それが先月の28日に開花したのでやはり少し早い。コンポストは40センチ平方の穴を、深さ40センチほど掘るのだが、それを二つ作っている。半年ごとに交代するためで、いま使っている方に筒型のキャップをかぶせる。野菜くずや果物の皮、魚の骨など水を切って投げ込み、コンポスターという発酵促進剤を上からかけ、時々土をいれてかき混ぜる。それをくりかえして、半年でいっぱいになるので、土をかぶせて寝かすのである。そうすると、半年後に交代する時にはそのまま肥料として使えるようになる。(2021.11.1)

ツワブキのつぼみ(横浜)

ツワブキの花(横浜)

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 10月の花 カヤツリグサ
どこにでも顔を出すつよい草である。形に特徴があり、どれも同じに見えるが種類が多いらしい。こどもの頃、三角形をした茎を割いて遊んだものである。茎を途中まで割いて、また反対の方から割いて開くと蚊帳を吊った形になる。荒れ地が少なくなりあまり見かけなくなったが、プランターに植えたピーマンの脇から出てきたので、花をつけるまで大きくした。花穂を根元から切って逆さにすると、線香花火のパッパッと火花が散る形にそっくりになる。線香花火の火花が活発に飛び出す始めのころを「マツマツ」、終わりごろの火花が流れるようになるのを「スギスギ」と囃していたのを思い出す。地方によっては、「カラマツカラマツ」とか「カヤツリカヤツリ」、そのあとを「ヤナギヤナギ」と言ったりするようである。(2021.10.1)

カヤツリグサ(横浜)

カヤツリグサ(横浜)

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 9月の花 イネの花
有機農産物を直接提携していただいている農家から、6月に野菜と一緒にイネの苗が届いた。プランター栽培でも育つと添えられていた。水が抜けない容器を探したら、使わなくなったアルマイトの洗面器があった。そこに赤玉の土を入れ苗束ごと植えて水を張った。庭の隅にそのまま置いていたら、8月上旬に穂が出て来た。よく見ると花穂で籾がついていた。その先端になにやら白いものが出ている。花と思って調べてみると雄しべであった。イネは風媒花で花はない。花はないが、穂が出た青田に風が渡ると、イネ特有の噎せるような匂いが押し寄せてくる。(2021.9.1)

イネの花(横浜)

イネの穂(横浜)

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 8月の花 クレオメとフロックス
近くの園芸店に足を運ぶことが多くなった。馴染みのある花が季節季節に並び、 以前に植えたことのある花に出会えるのも楽しい。クレオメと名札が付いていた花があった。花魁草と覚えていた花で、花の形が花魁の髪に沢山差してある簪に似ているのでそう思い込んでいた。風蝶草というのが正式名らしい。風に舞う蝶の姿になぞったものであろうか。花魁草は、花の香を花魁の白粉の匂いに譬えたものという。学名はフロックスで、夏から秋にかけて咲く花期の長い花である。甲斐大泉にあるターシャ・チューダー美術館に寄った時、内庭に沢山のフロックスが植えられていた。(2021.8.1)

クレオメ(横浜)

フロックス(甲斐大泉)

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 7月の花 タラノキの花
タラの芽といえば、コシアブラの芽とともに鮮烈な春の香と味を楽しませてくれる山菜の代表である。信州の山小屋に行けば、小屋のまわりにあり、天ぷらにして食べる。そのタラの木がわが家の庭の隅にある。五十年ほど前に引っ越してきて、何もない裸地を庭にしようと土をトラック何台分か入れた。それが黒土で山からの土だったようで、アケビやらエゴノキが生えてきた。タラの根茎も混じっていたらしく、何年かすると成長して花をつけるようになった。一本だけで、芽を二回食べると枯れてしまうというので、花だけをを見るようにしている。蕾の時も花の時もあまり変わらない。雄しべがのぞくぐらいで、そのまま熟して黒い実となる。(2021.7.1)

タラノキの蕾(横浜)

タラノキの花(横浜)

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 6月の花 橡の花
橡は栃とも書くがトチノキ科で大木になる。「マロニエの並木道」と歌にあり、マロニエはクリの木と思い込んでいたが、西洋トチノ木であった。大きな葉が緑陰をつくるので街路樹として植栽される。初めて栃の花を見たのは、神保町のすずらん通りであった。大きな円錐状の赤い花穂をつける。お茶の水にも栃の木通りがあり、赤花と白花の大木が並び、秋には実をつける。栃の実は栃餅にするとは知っていたが、そもそもは凶作の時の救荒食として保存されたという。実には強力なアクがあり、そのままでは食べられない。何回も水に晒してアク抜きをする大変な手間をかけたと聞く。(2021.6.1)

トチの花、赤(神保町、すずらん通り)

トチの花、白(お茶の水、トチの木通り)

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 5月の花 矢車菊
花の名を通称で覚えてしまうのはよくあることで、矢車草と思っていた。植物図鑑では矢車菊で、文字通り花冠が矢車の形をしている。キク科であった。矢車草はユキノシタ科で、五つの葉の形を矢車に見立てた別種であった。円錐状に小さな白い花をつける山野草である。矢車菊の方は園芸種で、花の色は青紫、桃紫、白と多彩である。写真は一時市民菜園として貸し出されていた畑に植えられていたもの。沢山の花が風に揺れる様に風情があった。今この土地は建売りの個人住宅が立ち並んでいる。(2021.5.1)

矢車菊(横浜、綱島)

矢車菊(綱島、市民菜園)

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 4月の花 修善寺寒緋桜
四月といえば桜であったが、この頃は開花が三月半ばからとどんどん早くなっている。お茶の水から駿河台下までの坂道は何本かあるが、ニコライ堂の脇から下る道には、四季に咲く色々な木が植えられていて、それぞれに名前の書かれた木札がついている。大体が春に咲く花が多い。薄いピンクの花びらが大ぶりで、やや下向きに咲いている桜の木があったので見ると、修善寺寒緋桜とあった。この桜は早咲きで、濃いピンクの寒緋桜と花びらが白くて多きい大島桜の交配種という。丘の上ホテルの脇を下る道には錦華公園があり、見事な大島桜が三月下旬には満開であった。(2021.4.1)

修善寺寒緋桜(お茶の水)

大島桜(錦華公園)

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 3月の花 母子草
ハハコグサは春の七草の中に入っているゴギョウのことである。御形と書くが、オギョウとも読む。草餅に今はヨモギを使うが、昔はこちらを使っていたという。荒れ地のどこにでも生える強い草で、花茎の先に黄色い粒粒の花がかたまって咲く。名前の由来は、その花をいただく葉や茎が白い綿毛をまとい、母が子を抱くように見えることからという説がある。同じキク科で父子草というのもあるが、花も茎も葉の付き方も違い似ていない。(2021.3.1)

「今月の花」は2003年3月に始めたので、気が付いてみると十八年が経ち十九年目に入ったことになる。よく持続したとも言えようが、あっという間でもある。実際八十年を生きてみれば平凡な人生といえども、人との出会いが織りなすタピストリーのようにエピソードに満ちたものであるが、最後に振り返ってみればそれも一瞬であったと言ってもよい。しかしながら、このたまゆらの中で出会った、美しいものを書きとどめておくのは、この世に生きたもののなにか「つとめ」のような気もするのである。長生きだけを偉ぶってはいけないのは、そのように生きた先人の記録の轍があるからである。その轍がどこで途切れようと、それがいのちなのだと教えてくれるのである。小生は、なぜか子どもの頃から「花」が好きであった。もちろん、木も草も親しく感じるのだが、花は咲いて散るという宿命を持つ。いつでも会えるわけではない、その花に出会うということが意味を持つ所以である。「年々歳々花亦同じ、歳々年々人同じからず」であるが、この楽しみは何物にも換えがたいのである。

ハハコグサ(横浜)

ハハコグサ(横浜)

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 2月の花 クリスマスローズ
クリスマスローズは名前のように、クリスマスの頃から咲き始めるニゲル種を指すが、近ごろは交配種が多く出回るようになった。園芸店で見たこの白い大きな花びらのものも、クリスマスローズとあったが交配種のようである。何年か前に園芸店でもとめて庭に植えた株も、ニゲル種とは違うレンテンローズという種で、春咲きクリスマスローズという名がある。レンテンというのはカトリックの四旬節のことで、3月頃から大きな葉の影から何本も花茎を伸ばす。花の後も葉は枯れずに残るので、グランドカバーとして植栽されるのも頷かれる。(2021.2.1)

クリスマスローズ(横浜、園芸店)

春咲きクリスマスローズ(横浜)

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 1月の花 サンシュユとサンショウ
山茱萸と書くがヤマグミとも読める。サンシュユはミズキ科でグミはグミ科であるが、紅い実の形は似ている。春早く咲く花に蝋梅があるが、山茱萸もその次に早く咲く。葉が出る前に黄色い花をかたまってつけるので、花の少ない時期には目を引く。それでロウバイと同じく庭木として人気があるのであろう。サンシュユと聞くと、稗つき節の「庭のサンシュウの木 鳴る鈴かけてヨ…」を思い出すが、このサンシュウの木は山椒の木のことであった。サンショウはミカン科で花の形も実の形も違う。(2021.1.1)

サンシュユの花(横浜、園芸店)

サンショウの花の蕾(横浜)

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 12月の花 ウメモドキ
梅擬と書くので、梅の木のどこに似ているのかと思っていた。梅はバラ科であるし、ウメモドキはモチノキ科である。大分前に裏庭に植えたが、ユズの木が大きくなり日陰になって、実をつけなくなってしまった。花は薄紫の小さな花で目立たないが、よく見れば梅の花に形は似ている。また、葉の形や枝ぶりも梅の木に似ていなくもない。花は初夏に人知れず咲くが、秋深くなって真紅の実をつけるのが何より目を引くので、庭木として人気があるのであろう。(2020.12.1)

ウメモドキの花(横浜)

ウメモドキの実(横浜、園芸店)

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 11月の花 フジバカマとオミナエシ
秋の七草であるが、近ごろ野原も少なくなり野生のものを見ることは難しくなってしまった。身近で見られるのは、荒地に強い尾花(ススキ)、クズ、萩ぐらいであろうか。野生の撫子や桔梗は山里に行ってもなかなか見られない。フジバカマなど絶滅危惧種になっているものもある。十七年前の八月に、山小屋の前の斜面にオミナエシと桔梗が寄り添うように咲いていたのを見たが、奇跡的なことであったようである。今はほとんどが園芸種で原種とは違うらしい。春の七草の覚え方は、和歌の中に名前を全部詠み込んだものが覚えやすい。秋の七草は、名前の頭の字を取って「お好きな服は?」と覚えるのがよいかもしれない。(2020.11.1)

藤袴(横浜、園芸店)

女郎花(横浜、園芸店)

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 10月の花 クズの花
秋の七草のひとつだが、最近は荒地に繁茂して何にでも絡み付いて君臨する嫌われ者になっている。今はそうでも少し前までは有用な植物であった。クズの蔓からとった繊維で織った葛布は丈夫で重宝されたし、根茎からは澱粉をとって葛粉を作って食した。ジャガイモの澱粉ではない本物の葛粉でつくった葛餅を、高千穂の渓谷にある店で食べたことがある。ふるふるとした食感が今でも蘇えりまことに美味であった。葛粉を湯に溶いたのが葛根湯で、風邪のときなどに飲んだものである。大きな葉は、遠くからもそれとわかる三つの葉の複葉で、花はマメ科の花らしい形で房状に咲いて存外に美しい。(2020.10.1)

クズの花(横浜)

クズの花(横浜)

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 9月の花 茗荷の花
裏庭の柚子の木の下に、山吹や紫陽花が茂り、その間に秋明菊やら台湾ホトトギスやら雑多な植物が蔓延っている。手入れをしないので強いものが生き残る。それが季節ごとに交代する。春は蕗の薹が出て、葉が茂り始める初夏にはドクダミが繁茂する。その下にミョウガの芽が頭を出したと思ったら、ぐんぐん背が伸びてドクダミの上に葉を広げる。茗荷が根元に蕾をつけるのは夏から秋にかけてで、放っておくと次から次に一日花を咲かせ、中がすかすかになってしまう。蕾を刻んで薬味として使いたいので、花を咲かせていないか気をつけるのである。(2020.9.1)

茗荷の花の莟(横浜)

茗荷の花(横浜)

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 8月の花 カボチャの花
庭の隅にコンポスターを置いて、生ごみを入れて堆肥にしているが、野菜や果実の種も混じる。それを庭に戻しているので、色々な種が発芽する。柿の種も発芽して小ぶりの鉢に移して、頃合いを見て地に下ろしたが、果たして実をつけるまで大きくなるかわからない。七月になって、花を咲かせているポーチュラカの株と株の間に、カボチャの芽が出てきたのでびっくりしたが、花を見たい気もあって放っておいた。すると、どんどん蔓を伸ばして大きな蕾がついた。雄花がいくつも咲いて、雌花もつくにはついたが落ちてしまった。実を生らす力はなかったのであろう。(2020.8.1)

カボチャの雄花(横浜)

カボチャの雌花(横浜)

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 7月の花 イチジク
イチジクは無花果と書くが、膨らんだ実の中に花が入っている。九月になり果皮が赤紫色を帯びて熟した実を、二つに割るとびっしり赤い花が詰まっている。 中はとろけるように甘い。子どもの頃、近所の家の庭には必ずと言っていいほど、イチジクの木が植えられていて、実が熟すのを待ち遠しく見ていたものである。農家にはイチジクのほかに柿、梅、夏ミカンなど実のなる木が何本もあった。身近に食べられるものを備えておいたのだと思う。茱萸(ぐみ)もあったが、十分に熟さないとひどく渋くて子どもながら敬遠したものである。(2020.7.1)

若いイチジク(横浜)

熟し始めたイチジク(横浜)

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 6月の花 ガマズミ
信州北八ヶ岳にある山小屋の坂道の脇に、葉の上に小さな赤い実をびっしりつけた灌木があった。食べてみると甘酸っぱい味でまずくはなかった。ズミ(酢実)という木があるので、その仲間かと思っていたのだが、初夏に花が咲いているのをみたら全く違った。そのはずで、ズミの花はリンゴの花に似ていてバラ科、ガマズミは小さな花が集合していてスイカズラ科であった。蒲酢実と書くのかと思って広辞苑を引いてみたら、「莢」に「?」(草冠に迷)と書く難しい字であった。(2020.6.1)

ガマズミの莟(信州、八千穂)

ガマズミの花(横浜、園芸店)

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 5月の花 アガパンサス
あちこちの家の庭や鉢植えでこの花が咲いているのを見たが、花の名前を知ったのは随分後のことである。何回か聞いてようやく覚えた。ユリ科でアフリカ原産という。花茎の頂に放射状に咲き花冠をなす。白花のものもある。花の姿かたちがすっきりして、青紫の花弁の色が美しいので人気があると思われる。紫君子蘭という和名があるように、赤い花の君子蘭に似ているが、君子蘭はヒガンバナ科であった。(2020.5.1)

アガパンサス(横浜)

アガパンサス、白花(横浜)

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 4月の花 コンフリー
コンフリーの花は小さな薄紫色の花で、釣鐘状の花を房状につける。大きな濃い緑の葉が、随分前に健康食ブームで持て囃されたことがあり、今は亡き母が窓の下に植えていた。若い葉をおしたしにしたり天ぷらにして食べていたと思うが、口にしたことはない。その後、この植物には食べ過ぎると肝障害を起こすアルカイドが多く含まれると保健局が警鐘を鳴らし、あっという間に食べられなくなった。もともと、植物は自らの身を守るために動物に害のあるアルカイドを蓄積する。それを先人は知っていたのであろう、茹でたり水に晒したりして、ほどほどに食していたのである。(2020.4.1)

コンフリー(横浜)

コンフリーの花(横浜)

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 3月の花 ローズマリーとルッコラ
ローズマリーの苗木を裏庭の隅に植えておいたら、繁殖力が強いらしく、あっという間にブッシュになった。香りのよいハーブで何かと重宝していたが、何年かして花をつけた。小さい青紫の花で可憐である。それがシソ科とは知らなかったが、よく見ると同じシソ科のカラミンサの花にそっくりであった。陽射しが増して、プランターに植えた水菜や菜の花などアブラナ科の十字花が咲き始め、ゴマの香味があるルッコラも白い十字花をつけた。暖冬のせいか、例年より半月もはやい。(2020.3.1)

ローズマリーの花(横浜)

ルッコラの花(横浜)

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 2月の花 シークワサーとミカン
沖縄の春は早い。ヒカンザクラが十二月末には咲き始める。横浜では三月、信州では四月である。沖縄ではスモモの花が二月には開花し、その後を追ってシークワサー、ミカンの花が咲き始める。沖縄にはいつもカメラを手にした友人がおり、信州には山小屋と野菜農家との縁がある。横浜に居て季節の違う土地と結びつくと、花を何回も楽しめるのである。シークワサーは果汁の爽やかな酸味で人気がある。ミカンと言えば沖縄では甘味の強いタンカンであるが、友人が送ってくれた写真は、南大東島のミカンの花であった。(2020.2.1)

シークワサーの花(沖縄、那覇)

ミカンの花(南大東島)

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 1月の花 雪の花
この時期、木の花は寒椿ぐらいしか咲いていないが、木の花ではないが見事な花があるのを思い出した。十年ほど前に大雪が一晩中降り続いたことがある。降りやんで朝に見たのは、庭の「雪の花」であった。ユキヤナギの無数の細い枝に、雪がびっしりと付いて花が咲いているようであった。早春に咲く雪柳はもう小さな蕾をつけているので、そこに雪がまとわりついて花のようになる。それが何とも美しく見えたのであった。(2020.1.1)

雪の花(横浜)

雪の花(横浜)

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 12月の花 山茶花
サザンカの開花が毎年早くなっているように思える。温暖化の影響であろうか。庭に、園芸種のサザンカで「揚羽の蝶」という二重咲きの苗木を三年前に植えた。それが今年になって枝一杯に花をつけた。11月に入ると咲き始め20日過ぎにはあっという間に散ってしまった。その後すぐ、12月に入る前に寒椿が咲き始めた。「山茶花」は椿の中国名であるが、それが誤用で「茶山花」となり「サザンカ」になったという。大体が赤、白、ピンクであるが一重咲き、二重咲き、ボカシ、シボリなど園芸種が多く、かるく百を越えるようである。(2019.12.1)

サザンカ(横浜)

サザンカ(横浜)

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 11月の花 イワシャジン
岩沙参と書く。参は人参のジンで、釣鐘人参と花はよく似ている。青紫の花が釣鐘のように下を向いて咲く。同じキキョウ科であるが、ツリガネニンジンは山野に、イワシャジンは山地の岩場に生える。近くの園芸店で鉢植えになっていたが、育成栽培する愛好家が増えているらしい。白花のものもあった。南アルプスの塩見岳に登った時、最後の急な岩場にイワギキョウが咲いていて、汗を吹き飛ばしてくれたが、こちらは桔梗のように青紫の花が上向きにつく。(2019.11.1)

イワシャジン(横浜)

イワシャジン、白花(横浜)

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 10月の花 綿の花
毎年五月の連休に、ワタの種を播く。日本綿業振興会の綿の種プレゼントでいただいたものであるが、どういうわけか発芽しなかった。それで、昨年自家で採れた綿の実から種を取りだして、綿毛を取り除いて一昼夜水に浸してから、大きな鉢と小さな鉢にそれぞれ三粒づつ播いた。さいわいに、それぞれ一つ発芽してくれたので、ナメクジやダンゴ虫に双葉を食べられないように大事に見守った。いつもより1か月遅れとなったが、本葉が出ると順調に育って、八月には花が咲き九月の半ばには大きくなった実が吹きはじめてほっとした。花は濃いクリーム色が普通であるが、遅くに咲いた花は花びらの先が赤みがかっていてびっくりした。(2019.10.1)

綿の花(横浜)

綿吹く(横浜)

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 9月の花 バジルとアップルミント
ともにシソ科なので葉も花も似ているが微妙に違う。バジルは一年草でミントは宿根草の違いもある。庭には青ジソが毎年発芽して出るが、バジルは種を播く。アップルミントは何年も前に植えたものがはびこっている。これらのハーブがあるとシンプルな食卓も豊かになる。青ジソはソーメンの薬味や刺身のツマに重宝するし、バジルがあるとトマトソースのパスタやペペロンチーノが引き立つ。ミントは紅茶に入れるとさわやかな香りである。夏の間ずっとあるのも心強い。(2019.9.1)

バジル(横浜)

アップルミント(横浜)

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 8月の花 テイカカズラ
東急日吉駅のバス停脇の慶応日吉校舎の石垣に、白い花をいっぱいつけた蔓が巻き付いていた。スイカズラかと思って調べてみると、花の形が違っていた。カズラ(葛)というのは蔓性の植物すべてを指すが、それぞれ出自が違う。クズはマメ科、サネカズラはシキミと同じマツブサ科で、スイカズラがスイカズラ科であった。調べあぐねて、近くの園芸店に行って写真を見せたところ、テイカカズラ(定家葛)と即答が帰ってきた。花は白く咲いて徐々に黄色くなるという。キョウチクトウ科であった。藤原定家の名をいただいているが、定家と式子内親王との恋の伝説に由来があるという。(2019.8.1)

テイカカズラ(横浜)

テイカカズラ(横浜)

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 7月の花 ピーマンとミニトマト
毎年、ゴーヤ、トマト、シシトウ、万願寺、オクラなど夏野菜の苗をもとめて、プランター栽培している。今年はゴーヤ、ミニトマト、オクラの他にピーマンを植えてみた。小カブは種を播いた。ゴーヤはウリ科、トマト、ピーマンなどはナス科、オクラはハイビスカスやワタと同じアオイ科で、それぞれに個性的な花をつける。小カブはアブラナ科だから菜の花や大根の花と同じ四弁の十字花をつけると思われるが、カブが大きくなると食べてしまうので、まだ花を見たことはない。(2019.7.1)

ピーマンの花と実(横浜)

ミニトマトの花(横浜)

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 6月の花 ネギ坊主
ネギに土をかけて庭に置いていたものが、ネギ坊主を出した。こうなると、茎も薹が立ってかたくなってしまう。このネギ坊主を天ぷらにすると美味いという人がいて、試してみた。集合花なので、中は花の蕾が詰まっている。揚げると中は軟らかくたしかに美味といえる。雑草をそのままにしている庭の一角に、近くの荒れ地からノビル(野蒜)を移植しておいたのが、花茎をぐんぐん伸ばして蕾をつけた。ところがなかなか花をつけない。その内いくつかが花をつけたが、あとは咲かずにそのまま零余子になるようである。ネギもノビルもユリ科とは知らなかった。そういえば、ノビルの花は小さいが、どこかユリを思わせるところがある。(2019.6.1)

ネギ坊主(横浜)

ノビル(横浜)

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 5月の花 イヌツゲ
鉢植えでいただいた小さな苗木を庭先におろしたところ、成長が早くすぐに茂みとなった。そこに表札を立てたのだが、何年かしたら白い花をいっぱい付けたのでびっくりした。ツゲの仲間と思っていたが、名前を調べてみた。花の形からイヌツゲとわかった。櫛の材となる黄楊は、木目が細かく成長がゆっくりであるのに対し、犬柘植は成長が早いが材としては使えないので、「イヌ」という蔑称をもらったものらしい。黄楊はツゲ科で、犬柘植はモチノキ科で別種であった。(2019.5.1)

イヌツゲ(横浜)

イヌツゲ(横浜)

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 4月の花 オオデマリ
オオデマリは手鞠花の別名があるように、大きな玉のようになって咲くのを手鞠と見立てたのであろう。紫陽花に似ているが、アジサイはユキノシタ科で、オオデマリはスイカズラ科である。やや早く咲くコデマリというのもある。バラ科で、小さな花が丸くかたまって咲くが球形にはならない。オオデマリは四月に咲き始める時は花びらは薄緑色で、五月に入ると真っ白になり庭に咲いているとハッと目を引くようになる。(2019.4.1)

クワの花(横浜)

クワの実(横浜)

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 3月の花 クワの花と実
三月に入ると、木々の花が一斉に咲き始める。梅、木瓜、沈丁花などは二月から咲くが、すぐにユキヤナギが続く。家の脇の通路に桑の木がある。このあたりは畑地だったらしく、クワも植えていたらしい。木も細く、あまり邪魔にならないので残しておいた。それが五年ほどして、花を咲かせ実をつけるようになった。クワの木は強く、冬に伸びた枝を全部落とすのだが、毎年同じように枝を伸ばす。小学生の頃、蚕の飼育観察をしていて、毎日クワの葉を採りに行ったのを思い出す。(2019.3.1)

クワの花(横浜)

クワの実(横浜)

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 2月の花 ヒヤシンス
どういうわけか若い頃からこの花が好きであった。花の名は、水仙のナルシッサスと同様、ギリシャ神話に出てくる美少年ヒアキントスからとある。ナルシッサスは水に映った自分に恋して死んだが、ヒアキントスは恋人であったアポロンの投げた円盤に当たって死んだという。フラスコや空き瓶に水を入れて、その上に球根を置いてよく水栽培をした。水中に伸びる白い髭根も面白く、重なり合って咲く紫の花色も美しく香りもよかった。(2019.2.1)

ヒヤシンス(横浜、園芸店)

ヒヤシンス(横浜、園芸店)

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 1月の花 千両と百両
十年ほど前に、多分鳥に種が運ばれてきたのであろう、赤と白花のマンリョウが庭に出てきたのを、このコラムに取りあげたことがある。その時に、千両があるのは知っていたが、百両というのもあると知った。実はマンリョウと似ていて数が少ないのでヒャクリョウとしたのであろうが、カラタチバナという別名がある。両方ともヤブコウジ科で実は下向きに付く。千両はセンリョウ科で、実は上向きに付く。正月の縁起もので切り花や寄せ植えに使われるので、12月になると園芸店に出まわってくる。(2019.1.1)

センリョウ(横浜、園芸店)

ヒャクリョウ(横浜、園芸店)

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 12月の花 シクラメン
地中海沿岸を原生地とする園芸植物で、12月ともなると園芸店はこの花の鉢で占められる。華やかな花の色と形で人気があるが、買ったことはない。花びらが上に反り返り、集まると篝火のように見えるので、篝火花という別名がある。植物学者の牧野富太郎の命名という。シクラメンは英語名で、咲き終わった後の花茎がくるくると円(サークル)のように巻くところから、とあるが見たことはない。(2018.12.1)

シクラメン(横浜、園芸店)

シクラメン(横浜、園芸店)

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 11月の花 キクイモ
初めてキクイモに出合ってから、もう20年になるだろうか。濃い黄色の花を咲かせる菊科の多年草で、根にダリアの塊茎のような芋をつける。菊芋は繁殖力が強く、荒蕪地などに群生しているのがよく見られるが、飢饉の時には救荒植物として利用されたという。茹でても水っぽくて美味しいとはいえないが、味噌で漬けると思わぬ美味となる。八丁味噌とその溜まりを信州味噌と合わせて漬けこんだことがあるが、酒肴に絶好の一品となった。写真は、家の近くの鶴見川の土手に生えていたもの。(2018.11.1)

キクイモ(横浜、鶴見川)

キクイモ(横浜、鶴見川)

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 10月の花 ポーチュラカ
ポーチュラカという名を知ったのは最近のことである。学名から来ているのだが、花と葉の形は見覚えがあった。花は松葉ボタン、葉はスベリヒユに似ていた。実際にスベリヒユ科で、和名も花スベリヒユとあった。スベリヒユは畑に地を這いつくばって広がり、農家にとってはやっかい者である。茹でておしたしにして食べたことがあるが、酸味とあくが強くとても多くは食べられない。なかなか美味とは言いがたい。この夏、ポーチュラカを黄、桃、赤と園芸店でもとめて庭に植えた。花の色は他にも、白、朱、しぼりなど多彩である。それが、夏を越して未だ咲きつづけている。(2018.10.1)

ポーチュラカ(横浜)

ポーチュラカ(横浜)

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 9月の花 ホテイアオイ
布袋葵と書くが、水に浮くために葉柄がふくらんで、布袋様のお腹のようだということから来ている。葵とあるが、芙蓉とかハイビスカスのアオイ科ではなく、ミズアオイ科である。花は薄紫色でヒヤシンスに似ていて、英語ではウオーター・ヒヤシンスというのもうなずける。庭の小さな池にメダカを飼う時はホテイアオイを一緒に入れるのだが、繁殖力がつよく次々に株を増やして池いっぱいになる。大きな池でも一面に花が咲いて見事であるが、農家にとってはやっかい者らしい。(2018.9.1)

ホテイアオイ(横浜)

ホテイアオイ(横浜)

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 8月の花 ハイビスカス
この花の色は南国を想起させる。赤にしても黄色にしても、強い光を反射して鮮やかである。沖縄には友人を訪ねて何回か行ったが、ハイビスカスは年中咲いていて、初めこそ目新しかったのだが段々当たり前になってしまった。それで、他の珍しい花に気を取られて写真を撮ることもなかった。一枚も撮っていなかったことに気が付いたのは、このコラムの写真を探したからである。こういうことが、今になって悔やまれるのである。黄花の方は何年か前にもとめたもので、赤花は近くの園芸店にあったものである。(2018.8.1)

ハイビスカス(横浜)

ハイビスカス(横浜)

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 7月の花 イワリンドウ
夏が来ると、南アルプスの塩見岳に登ったことを思い出す。三年前に登ったのだが、今から思うとそれが最後の山行になった。これから山に登ることはあるかも知れないが、三千メートルを越える山を登るのは無理だと思う。体力の限界をおぼえさせてくれた大きな山であった。大事に最後まで残しておいた山でもあった。頂上への最後の急峻な岩場にかかっていて、ひとつひとつ岩に手をかけて登っている時に迎えてくれたのが、イワリンドウであった。岩の根元に張り付くように咲いていた。その花の青さが汗を吹き飛ばしてくれた。(2018.7.1)

イワリンドウ(南アルプス、塩見岳)

イワリンドウ(南アルプス、塩見岳)

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 6月の花 マムシグサ
蝮草はサトイモ科テンナンショウ属で、ウラシマソウやムサシアブミと同様に特徴的なたたずまいである。花のように見えるのは仏炎苞で中に棒状の肉穂花序がある。夏の終わりになると真っ赤な実が団子状にかたまって付く。苞が蝮のように見えるのでその名がついたと思っていたが、茎の肌が蝮の皮膚に似ているということであった。信州の山小屋の坂道にも毎年同じところに顔を見せる。これはカントウマムシグサであろうか。苞全体が紫色のものはムラサキマムシグサというらしい。沖縄の友人がムサシアブミが咲くと写真を送ってくれるが、苞が丸っこく鐙の形に似ている。ウラシマソウは肉穂花序の先が糸のように長く垂れ下がる。それを浦島太郎の釣り竿の糸に見立てたのであろう。 (2018.6.1)

マムシグサ(信州、佐久穂)

マムシグサ(信州、佐久穂)

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 5月の花 ミヤコワスレ
都忘れと書くが、順徳天皇が佐渡に配流され、その地でこの花を見て慰めを得たという言い伝えがある。青紫色の花弁の野菊で、嫁菜のことと思っていた。 実際、ミヤマヨメナから来ているという。野に春咲く菊ということから、野春菊という別名がある。地下茎で増え次から次へと顔を出す。わが家の庭に、何年か前に園芸店でもとめて一株植えたが、陽当りが悪かったらしく増えるけれども花を付けなかったので、移植してみた。それが二年ほどたってようやく花を付けてくれた。(2018.5.1)

ミヤコワスレ(横浜)

ミヤコワスレ(横浜)

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 4月の花 ソメイヨシノ
このコラムの第一回はヒカンザクラであった。そのあと、スルガダイニオイ、オオシマザクラ、ヤエザクラを取りあげたが、ソメイヨシノは初めてである。 今は桜といえばソメイヨシノを指すほどであるが、これが江戸時代に染井村というところでエドヒガンとオオシマザクラの交配からつくられたのはよく知られている。古くは花といえば梅の花が桜より上位であったように思われるが、江戸時代の俳諧では「花」といえば「桜」をさす。平安末期の有名な越天楽今様に、「花盛りかも白雲の…」とあるのは山桜であったろうか。(2018.4.1)

ソメイヨシノ(横浜)

ソメイヨシノ(横浜)

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 3月の花 連翹
連翹の真っ黄色な花が燃えるように咲くのは早春である。葉が出る少し前に、四弁の花びらがいっぱいに集まって咲く。この地に来て46年余になるが、家 のまわりはほとんど畑か栗林であった。田んぼもあった。それが段々と戸建てが建ち始め、大きなマンションに替わってしまった。それでも、わずかに残った自家用の畑があり、それを囲む垣根に連翹が植栽されていて、毎年3月になると垣根全体が黄色に染まる。(2018.3.1)

連翹(横浜)

連翹の垣根(横浜)

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 2月の花 福寿草
近くの園芸店に鉢植えの福寿草が咲いていた。早春に咲くキンポウゲ科の花で、真っ黄色の花びらが幾重にも重なっている。正月飾りの寄せ植えの鉢には、定番の松竹梅、南天などお目出度い植えものの脇に、春をいち早く告げる花として蕾のふくらんだ福寿草がかならずあったものである。現代の寄せ植えは、定番のものは一部だけにして、葉牡丹、ヤブコウジなど色々な植えものがかなり自由にアレンジされているようである。(2018.2.1)

長らく連載してきた「今月の花」も、この号で180回となった。15年間毎月欠かさずにやってきたが、あっという間の感じである。まだ続かせたい気もないではないのであるが、一先ず区切りを付けようと思う。あとは毎月ということではなく、随時出合った花を取りあげて行こうと思う。

福寿草(横浜)

福寿草(横浜)

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 1月の花 ロウバイ
新年になり、散歩がてらに家のまわりをを少し歩いてみると、あちこちの家の庭に黄色い花が咲いていて良く目立つ。真冬に咲く蝋梅である。花びらが半透明で蝋細工のようなのと、花が梅に似ているのでその名があるが、バラ科ではなくロウバイ科であった。あとから出てくる葉も実も違う。蝋梅は薄黄色で中央の部分が紫色らしいが、このあたりでよく目にするのは、花びらも花芯も黄色で「素心蝋梅」ということであった。(2018.1.1)

ロウバイ(横浜)

ロウバイ(横浜)

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 12月の花 サルビア
12月に入ると、庭は山茶花と寒椿の領分になるが、その下に咲いているのはサルビアと四季咲きのバラくらいである。サルビアはシソ科で種類も多く、花期も長い。初夏に植えたものがまだ咲いている。前年の種から発芽するものもあるし、宿根のものもある。どこからかタネが飛んできたのであろうか、薄いピンクのサルビアが庭に出てきたこともある。園芸店に行くとサルビアコーナーがあり、サルビア・レウカンサ、キャッツホィスカー(猫の髭)など色々な園芸種を見ることができる。(2017.12.1)

サルビア・レウカンサ(横浜)

サルビア(ピンク)(横浜)

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 11月の花 ランタナ
ランタナに出合ったのは、十数年前にマレーシアのキナバル山に登った時であるが、印象に残ったものの名前は知らなかった。それが日本にも随分と植栽されるようになったことは、前にもこの欄で書いたことがある。神保町の小路にも真っ赤なランタナが植えられていた。別名、七変化と呼ばれるように花びらの色は変化に富んでいる。毒を含んでいるようだが、蝶には好まれるらしい。庭の七変化にも見事なツマグロヒョウモンが翅を休めていた。(2017.11.1)

ランタナ(神保町)

ランタナとツマグロヒョウモン(横浜)

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 10月の花 シシトウとタカノツメ
シシトウもタカノツメも唐辛子と同じナス科で白い小さな花を下向きにつける。ところが、シシトウやピーマンの実は下向きのままであるが、タカノツメやトウガラシは直立する。どちらも熟すと実が赤くなるのは同じである。熟す前の緑のトウガラシを青唐辛子と称して、味噌をつけて食べるのであるが大変辛い。蓼食う虫もなんとやらで、ビールにはこれが一番という好きな人もいる。五色唐辛子という園芸種もあり、白、黄緑、緑、紫、赤と同じ株から多彩な実が直立してつく。(2017.10.1)

シシトウ(横浜)

タカノツメ(横浜)

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 9月の花 ウドとシシウド
車道と歩道の緩衝帯に樹木や灌木が植えられているが、草も生い茂る。そこにウドの花が咲いていていた。咲いていなければわからなかった。多分、運ばれてきた土の中に根が残っていたのかもしれない。ウドの大木と言われるが多年草で、春先の香り高い芽を食べる。大きいのに役に立たないという意味で使われるが、大きくなってしまったら食べられないということであろう。麦草峠のヒュッテの脇のお花畑の入り口にシシウドが咲いていたが、まるで花がちがう。調べてみると、ウド(独活)はウコギ科でシシウド(猪独活)はセリ科であった。(2017.9.1)

ウドの花(横浜)

シシウドの花(麦草峠)

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 8月の花 シマトネリコとネズミモチ
庭には苗から移植した島トネリコと、鳥が運んで来た種から発芽して大きくなったネズミモチの木がある。同じモクセイ科で花の付き方も咲く時期も似ているが、実は全く形状が違う。シマトネリコの実は平べったい白い実で、房状にびっしりとつく。ネズミモチの方も房状につくが黒い実で、やや細長で丸まっちい。それがネズミの糞そっくりなので、ネズミモチとなったのであろうか。同じモチでも、黄金モチは丸く綺麗な赤い実をつけ庭木として人気がある。(2017.8.1)

シマトネリコの花(横浜)

ネズミモチの花(横浜)

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 7月の花 ハゼ
いただいた寄せ植えの鉢に、白い花穂をつける名前のわからない木(後でリョウブとわかった)やシマトネリコの他にハゼの木があった。多分そのまま鉢植えの盆栽として楽しむものだったのであろうが、裏庭におろしてみた。それがあっという間に大きくなった。あまり背が高くならないうちにと思いシマトネリコとハゼの枝をつめたのであるが、小雨の降っている時にやったのが失敗でハゼの樹液が手にかかってしまった。案の定かぶれて手首を腫らした。信州の山小屋のまわりにもハゼがあり、その葉に触れただけで全身かぶれた子がいたのを思い出した。「ろうの木」という別名は、この実からハゼロウを採ったところから来ている。(2017.7.1)

ハゼの花(横浜)

ハゼの実(横浜)

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 6月の花 夏椿
夏椿とはシャラ(沙羅)の木のことである。白い花が椿に似ていて初夏に咲くのでいただいた名で、清楚な花によく合っている。同じツバキ科で姫沙羅というのもあり、山野にあってやや花は小さく高木になる。平家物語の冒頭の「沙羅双樹の花の色盛者必衰の理をあらわす」とあるのは、釈迦の涅槃の際に二本の沙羅の木があったという言い伝えを引いている。花の色はやわらかい白であるが、褪色する前に花ごと落ちるのは椿と同じである。(2017.6.1)

ナツツバキ(横浜)

ナツツバキ(横浜)

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 5月の花 オダマキ

オダマキは苧環と書く。苧環は、紡いだ麻糸を丸く巻いたもので、花の形が似ているところから来ているという。庭に出てきたものは植えた覚えがないのだが、種が飛んで来たのであろうか、何年か前から咲くようになった。園芸種のような鮮やかな色ではないので、山苧環であろうか。以前に園芸種の風鈴オダマキというのを、園芸店でもとめて植えてみたことがあるが消えてしまった。花の形がやや小ぶりで、風鈴のように下を向いて咲く。(2017.5.1)

オダマキ(横浜)

風鈴オダマキ(横浜)

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 4月の花 チューリップ

チューリップのあまりに端正な花の佇まいは、野の花という感じはしない。園芸植物の女王と言っていいかもしれない。花びらが開く前の蕾のときの可憐さが愛されるのであろう、格別の人気がある。チューリップの球根が、資本主義の勃興期に高値で取引され投機の対象になった話は有名である。花の色も赤、白、黄色のほかに、ピンク、紫から黒、斑入りまであり、花びらの形もさまざまである。花が終り葉も枯れると、球根を掘りあげて夏は涼しいところで眠らせる。その球根を冬の初めに植えなおすのである。この十年ほど繰り返して楽しんでいる。(2017.4.1)

チューリップ(横浜)

チューリップ(横浜)

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 3月の花 リンショウバイ

[輪生梅]と思っていたが、[林生梅]であった。中国原産でかなり古く日本に渡ってきたらしい。庭梅というのが通り名でバラ科である。花が梅の花に似ているところからとあった。季語辞典では「郁李(にわうめ)の花」と書いて晩春になっている。葉が出ると赤い小さな実をつける。家の庭にも古くから一株ある。春早い時期に、細い枝一杯にびっしり花をつけて見事である。リンショウバイによく似たユスラウメは、梅桃とも山桜桃梅とも書くが、花も実も一回り大ぶりである。両方とも実が熟すと食べられるが、リンショウバイはやや酸味が強くユスラウメの方が美味しいと思う。(2017.3.1)

リンショウバイ(横浜)

リンショウバイ(横浜)

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 2月の花 虹色スミレ

「よく咲くスミレ」とか「虹色スミレ」とか、ビオラやパンジーを品種改良した園芸種が園芸店に並ぶようになった。種苗会社の他にも、異業種の企業が開発していると聞く。花弁の模様まで遺伝子組み換えとかで工作できるらしい。なにかあまりに人工的なのには鼻白むが、新しい品種作りは昔からあった。ツバキ、ツツジ、キクなど観賞用の花は、ほとんど人工的な交配によるものである。今を時めくソメイヨシノは江戸時代に染井という地で、エドヒガンとオオシマザクラから生まれたのは有名である。同様に朝顔の変種も珍重され、園芸師たちは黄色の朝顔を作ろうと競争したという。(2017.2.1)

ニジイロスミレ、庭(横浜)

ニジイロスミレ、園芸店(横浜)

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 1月の花 イチゴの木

12月の半ばに信州飯田にまわって、人形劇アニメ作家の川本喜八郎記念美術館と柳田國男記念館を訪ねた時、町を歩いてみた。飯田市は戦後すぐの大火で、古い建物はほとんど残っていない。わずかに、土蔵とか武家屋敷の土塀とかが点在していた。その古い地区の家の庭先に、ヤマモモのような赤い実をつけて、馬酔木に似た白い釣鐘状の花が咲いていた。帰ってから調べてみると、「イチゴの木」とわかった。ツツジ科であるから花が馬酔木やドウダンツツジに似ているのは納得であるが、実がヤマモモ科のヤマモモやミズキ科のヤマボウシにそっくりなのが面白かった。ヨーロッパ原産とあった。(2017.1.1)

イチゴの木(信州、飯田市)

ヤマボウシの実(横浜)

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 12月の花 紅イモとハマヒルガオ

沖縄で栽培されている紅イモの花は冬に咲く。サツマイモが朝顔と同じヒルガオ科というのは意外な感じがするが、花の形を見れば同じである。沖縄の友人が古宇利島の畑で咲いていた写真を送ってくれた。畑一面に花が咲いていて壮観である。昨夏石垣島に旅行した時、北部の明石の海岸に浜昼顔が咲いていたが、花の色も形もそっくりであった。『はまひるがおの小さな海』という佳品を残した、今は亡き児童文学作家の今西祐行先生が校長をしていた、菅井農業小学校でも子供たちとサツマイモを作ったが、花の咲いたのを見たことがない。(2016.12.1)

ベニイモ(沖縄、古宇利島)

ハマヒルガオ(沖縄、石垣島)

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 11月の花 ノギクとノコンギク

野菊というのは文字通り山野に生えている菊で、家菊は野菊を観賞用に改良したものと言えば実に大雑把な言い方である。それほど野に咲いている菊は多種多様で、野路菊と言ったり野紺菊と言ったり小菊と言ったりと、融通無碍である。葉の形と花の色が少しずつ違う変種もあり、特定するのが難しい。キク科 とわかれば野菊と言えばよいのかもしれない。左の山小屋の入り口に咲いているものも、野菊としか言えない。右は、山形の最上川に遊んだ時に道端に咲いていたもの。野紺菊であろうか(2016.11.1)

野菊(信州、佐久穂)

野紺菊(山形、最上川)

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 10月の花 ニラの花

韮がユリ科であるとは知らなかった。ニラは葉茎が美味であるが、花を初めて食べたのは信州であった。産直提携で懇意にしている農家でお昼をいただいた時、摘んできたニラの花をサッと湯通しして、酢と油と塩のシンプルなドレッシングのサラダであったが、ニラ特有のにおいも気にならず爽やかな食感であった。同じユリ科であるが、ノビルは食べられるがハナニラは食べられないと聞いている。植物が持っているなにか強い毒がハナニラにはあるのかもしれない。(2016.10.1)

ニラの花(横浜)

畑のニラ(横浜)

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 9月の花 オクラとワタの花

オクラとワタは毎年作っている。オクラは園芸店で苗を、ワタは種からで、いつも5月の連休に植えたり、種を播くのだが、今年はどういうわけか苗は大きくならず、種も発芽しなかった。もう一度苗を買い、ワタは昨年自家栽培したものから初めて種をとって使った。それで、一か月ほど遅れてしまった。さいわいその後は順調であったが、莟がつくのも花が咲くのもその分遅れて、大体は8月で咲き終わるのが、9月になってもまだ咲いて実をつけている。オクラもワタもアオイ科なので葉も花もよく似ているが、オクラの花の蕊の根元は暗紫紅色で、花びらのクリーム色もワタにくらべて濃い目である。(2016.9.1)

オクラの花(横浜)

ワタの花(横浜)

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 8月の花 ギボウシ

擬宝珠と書くが、橋の欄干の飾りとどんな関連があるのであろうか。調べてみると、蕾のときの形が擬宝珠に似るとあった。庭にあるものは葉が大きいので大葉擬宝珠というらしい。何年か前の夏に信州の大鹿村に行った時に咲いていたが、葉が小さかったように思う。花の色とか形はそれほど違いはないように見える。大体は青紫であるが、濃い薄いの差はある。白花のものもあった。ユリ科で、東北ではウルイと言って若芽を食す。神保町の居酒屋でウルイのオヒタシを食べたように思うが、大葉擬宝珠の葉とは知らなかった。(2016.8.1)

ギボウシ(信州、大鹿村)

ギボウシ、白(信州、大鹿村)

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 7月の花 ホオズキの花

ホオズキは酸漿と書いて難しい字である。なにか懐かしい感じがするのは、縁日で売られていたり、赤く熟した実で遊んだ記憶があるからであろうか。実の中の細かい種を針の先かなにかで根気強く出して、空洞になった実を口に含んで鳴らして楽しむのである。海ホオズキを使った向きもあるかもしれない。果肉は酸味があり、子どもの時のおやつではなかったと思うが、喜多方に旅した時にホオズキジャムがあったので買ってみた。それが、存外に美味で驚いたことがある。写真は伊那に遊んだ時、旧秋葉街道脇に野生の群落があった。ナス科らしい花の形で、同じナス科のピーマンやシシトウに似ている。(2016.7.1)

ホオズキトの花(信州、伊那谷)

ホオズキの実(信州、伊那谷)

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 6月の花 トマトとナスの花

前に野菜の花として、マメ科のソラマメとエンドウの花を取りあげたことがある。毎年5月の連休にトマト、ナス、オクラ、シシトウ、甘唐辛子、ゴーヤなどの苗を買ってきて、プランターや庭に植えるのだが、一か月もすると花をつけ始める。オクラはアオイ科、ゴーヤはウリ科である。あとはナス科で、花びらの形も色も大きさも違うが、よく見るとそれぞれ造化の妙を尽くしていて美しく個性的である。(2016.6.1)

ミニトマトの花(横浜)

ナスの花(横浜)

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 5月の花 デイゴの花

デイゴの花が咲き始めると、沖縄は初夏(うりずん)である。沖縄の友人と本島を周遊したときに、大宜味村で見事なデイゴの大木があり満開であった。朱赤の花が炎のような形で咲いていて、熱帯植物園で見たノウゼンカズラ科の火焔木の花の朱赤を思わせた。友人の話では、毎年このように咲くとは限らないらしい。デイゴヒメコバチという小さな蜂の虫害で木が弱ることも多いという。沖縄の県花でもあるので、心配していた。デイゴの語源は「赤」ということで、ほとんどが赤花であるが、白花もあるという。(2016.5.1)

デイゴの木(沖縄、大宜味村)

デイゴの花(沖縄、大宜味村)

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 4月の花 マーガレットと春菊

七年ほど前にマーガレットを植えた。咲き終わった花を毎日取り除いてやると、花期は長い。一年で茎や枝が木のように固くなるが折れやすく、雪が積もったりするとすぐ折れてしまう。それからは、大雪の予想が出ると、安物のビニール傘で保護している。木春菊という名があるのを後で知った。マーガレットも春菊もキク科なので、花も葉もよく似ている。春菊の種をプランターに播いて、大きくなったらオヒタシにしようと思っていたのだが、育ちが悪く、放っておいたら花を咲かせた。(2016.4.1)

マーガレット(横浜)

春菊(横浜)

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 3月の花 樒(シキミ)

近所の知り合いの庭の垣根の木が、薄い黄色の花をつけていた。いままで見たことがない花であった。花びらが辛夷(コブシ)のように裂けていて、かたまって咲いている。葉が暗緑色の常緑樹で、毎年咲くと気になっていたのだが、その家の方にはつい聞きそびれていた。写真に撮って、メールで沖縄の友人に見てもらうと、すぐに答えが返ってきた。「樒」でシキミ、あるいはシキビとあった。榊のように枝をお供えにするので、社寺の境内などによく植えられているという。(2016.3.1)

樒(横浜)

樒(横浜)

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 2月の花 椿

ツバキ科の花というと、藪椿、雪椿、寒椿、山茶花、侘助などが知られるが、 花の色も白からピンク、赤まで多彩で、咲き分けや絞りまである。花びらの形や重なり具合も、それぞれに変種があるようで園芸種が多い。山野に見られるのは大体がヤブツバキで、五木の子守唄の「花はなんの花、つんつん椿」もヤブツバキであろうか。庭の椿は咲き分けで、白と赤のほかに絞りがあり、それも半分が絞りで半分が赤という変わり種である。隣地の十年以上も放置された主のいない庭に、白椿が咲いていた。白妙蓮寺という名らしい。(2016.2.1)

今回で「今月の花」は丸十三年となった。自身が十三年、年を取ったということでもあり、やや複雑な心境でもある。とりあえず、あと二年ほどと思ってはいるが、臨時停車、臨終列車というのもあるかもしれない。あまり先のことは言わないに越したことはないと思うこの頃である。

椿、咲き分け(横浜)

椿、白(横浜)

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 1月の花 葉牡丹

花ではないが葉牡丹が庭にあると、冬の庭も明るくなる気がする。新年も近づいてきたので、十二月末に園芸店で葉の縮れているものといないものの二種類、それぞれ白と紫のハボタンを択んで、さびしくなった裏の庭に植えた。花キャベツという別名もあるようにアブラナ科で、春になると花穂が出る。ぐんぐん伸びて、菜の花と同じような十字花を咲かせる。それを待つのも楽しみである。(2016.1.1)

ハボタン(横浜)

ハボタン、縮緬(横浜)

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 12月の花 オオナガミノクダモノトケイソウとルリミノウシコロシ

ツワブキの花が終わり、ランタナも実ばかりになると、庭はめっきりさびしくなる。咲いているのは立ち寒椿とその下に繁茂しているサルビアぐらいである。ところが、12月になって沖縄の友人から珍しい写真が送られてきた。北部ヤンバルの西銘岳で撮ったものだという。一つはオオナガミノクダモノトケイソウで、「大長実の果物時計草」と書いて大きな花である。実も大きいがパッションフルーツ(果物時計草)と同じ種で、ジュースにする。もう一つはルリノミとあったが、サワフタギ(沢蓋木)の実で、綺麗な瑠璃色である。ルリミノウシコロシと別名があったが、材質が堅く牛の鼻輪に使われたとある。ハイノキ(灰の木)科という科も初めて知ったが、灰を媒染剤に使うという。(2015.12.1)

オオナガミノクダモノトケイソウ(沖縄、宮城邦昌氏撮影)

ルリミノウシコロシ(沖縄)

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 11月の花 ホットリップス

サルビアはシソ科で、シソ科は種類が多く花期も長い。夏から晩秋まで咲いている。普通にサルビアと言っているものは大体は赤か白であるが、それ以外にも青から濃い紫まであり、花の形も微妙に違う。それぞれに名前が付いているのは原産地が違うせいであろうか。毎年、前の年に咲いたものの実がこぼれて芽を出すので一年草と思っていたら、庭のホットリップスというサルビアは宿根らしく越年した。春になると根元のところから新しい枝を伸ばして繁茂している。白い花びらの先が口紅をつけたように紅いので、洒落た名をもらったようである。同じ株なのに、紅いだけのものや白いだけのものまである。(2015.11.1)

ホットリップス(横浜)

ホットリップス、白花(横浜)

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 10月の花 ミゾソバとママコノシリヌグイ

ミゾソバは溝蕎麦で、文字通り畑や休耕田の水が流れている溝などを好むタデ科の野草で蕎麦の花に似ている。葉の形に特徴があり、「ウシノヒタイ」の別名がある。近くに繁茂する場所がいくつかあったが、やがて戸建ての住宅が建ち並ぶようになり、姿を消していってしまった。同じタデ科で花の形は似ているが、ママコノシリヌグイという酷烈な名前の野草がある。葉はミゾソバと同様桃の葉に似ているが、茎に棘がびっしり生えていて刺さると痛い。名の由来は、継母が実の子ではない継子に辛く当たったということであろうか。(2015.10.1)

ミゾソバ(横浜)

ママコノシリヌグイ(横浜)

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 9月の花 丸葉岳蕗と松虫草

今夏、南アルプスの塩見岳に登った。戸倉林道から三伏小屋に入ったのであるが、小屋から近い烏帽子岳から見た塩見岳は雄大であった。烏帽子岳に登る道の両側はお花畑になっていて、マルバダケブキやマツムシソウの大群落が柵で保護されていた。道の脇にもハクサンフウロ、バイケイソウ、ゴゼンタチバナなどがあふれ、ほかにも名前を知らない花が無数に咲いていた。三伏を午前五時に出立、塩見岳に登って小屋に帰り着いたのが午後四時。天候に恵まれ、すばらしい山行であった。(2015.9.1)

丸葉岳蕗(烏帽子岳)

マツムシソウの群落(烏帽子岳)

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 8月の花 ブーゲンビレア

八重山の石垣島に行った時に、竹富島に渡ったことがある。石垣港からフェリーで20分ほどの小さな島で、水牛が牽く観覧車で部落の道を周回するのが面白く、若い人や家族連れに人気がある。人家は珊瑚石の垣根を巡らしてあり、南国の花がこぼれるように咲いていた。中でも色の鮮やかさで目を引くのは、ブーゲンビレアとハイビスカスであろうか。石垣には八重山島胡椒(ピパーツ)の木も生えていて、沢山の実をならせていた。(2015.8.1)

ブーゲンビレア(竹富島)

胡椒の実(竹富島)

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 7月の花 パパイア

六月の下旬、沖縄の友人と梅雨明けの石垣島をまわったことがある。南国らしくバナナやドラゴンフルーツ、パパイアなどが道脇の畑や人家の前庭に当たり前のように植えられていた。どれも特徴のある形なので、目立ってそれとわかる。石垣島北部の明石の民宿に泊まった時、庭に二株のパパイアの木があった。パパイアは雌雄異株で、雌花は幹からぷっと吹き出すように咲き、自家受粉で実をつける。雄花は無用のようであるが、花の先に形のちがった実をつけることもあるらしい。石垣島の年平均気温は24度。一年中花を咲かせ実をつけるという。(2015.7.1)

パパイアの雄花(石垣島、明石)

パパイアの雌花と実(石垣島、明石)

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 6月の花 蛍袋とカンパニュラ

ホタルブクロは、初夏の山道のわきに可憐な装いで迎えてくれる。釣鐘状の紫色の花で下向きに咲くが、白花のものもあるらしい。知人から株分けしていただいたのが庭にあり、宿根なので勢力をひろげている。カンパニュラはそのまま「小さな鐘」の意であるが、同じキキョウ科でも洋種で園芸種も多い。花は下向きのものもあるが、大体は横向きとか上向きにつく。花の色も青、紫、ピンク、白と多彩で、花びらの形もさまざまである。(2015.6.1)

ホタルブクロ(横浜)

カンパニュラ(横浜)

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 5月の花 ベニカナメモチ

近頃、生け垣に好んで植栽されるようになった木であるが、紅要糯という名の通り、春の若葉が赤くて花のように見える。わが家の裏庭にも、隣の家との境に若木を植えてみたのだが、それが何年かして花をつけているのに気がついた。白い小さな花が沢山に集まって美しい。あまり刈り込まなかったのが幸いして花をつけたらしいのだが、調べてみるとバラ科で、冬になるとやはり野イバラのような赤い実をつけた。(2015.5.1)

ベニカナメモチの蕾(横浜)

ベニカナメモチの花(横浜)

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 4月の花 紫蘭

近くの歩道の脇にシランが群生しているところがあり、桃紫色の花が一斉に咲くと、ひと際目を引く。ラン科の花らしく花びらに特徴があり、小さいがカトレヤのように華やかである。最近まで別名をジジババと間違えて覚えていたのだが、それは春蘭のことで花の形をジジとババが並んでいるように見立てたものだという。紫蘭という名ではあるが、白花のものもあった。(2015.4.1)

シラン(横浜)

シラン、白花(横浜)

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 3月の花 ユキヤナギとコデマリ

立春を過ぎて2月下旬から3月初めにかけて咲く早春の花は先ず沈丁花、それから雪柳であろうか。ジンチョウゲは強い芳香でそれとわかる。ユキヤナギは柳のような細い枝を撓わせて白い花をびっしりとつけ、それで雪が降り積もったように見えるのである。少し遅れて咲くコデマリもユキヤナギのように白い小さな花を沢山つける。その半球にまとまった花のかたまりを、小さい手毬のように見立てたのであろう。ユキヤナギもコデマリもバラ科であったとは知らなかった。(2015.3.1)

ユキヤナギ(横浜)

コデマリ(横浜)

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 2月の花 ケラマツツジとサクラツツジ

このギャラリー「今月の花」は、筆者の住んでいる横浜と、農家との付き合いが長い信州、それと友人のいる沖縄という、三つの支えがあって書かれているのは、とうに読者は気付かれておられよう。わが家に植栽されたもの、庭に勝手に生えてくるものはすでにほとんど取り上げた。信州は、北八ヶ岳の山小屋に行った時やその旅の途中に出合ったものである。沖縄本島最北端「奥」出身の友人は、しばしばヤンバルに猪垣の調査に入り、その時々の写真を送ってくれる。農作物がそうであるように、花の時期も時間の差がある。同じ花でも横浜を基点にすると、信州は一か月遅れ、沖縄は二か月ほど早い。ツツジでいうと、本州で一番早いミツバツツジでも三月から四月であるが、二月ともなれば沖縄ではケラマツツジ、サクラツツジが満開である。(2015.2.1)


慶良間ツツジ(沖縄、那覇)

サクラツツジ(沖縄、那覇)

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 1月の花 綿の実と紅葉

5月に種を播き、夏に花が咲いて実がふくらみ、9月に桃(綿の実)が吹くのはいつものことであるが、昨年はとくに順調で綿の実も大きく10個ほどついた。鉢植えであるが、実が開絮してワタが吹き出してもそのままにしておいた。それが、秋深く11月になると初めからあった葉が紅葉し始めた。脇芽から出た後からの葉は緑のままであったので、ワタの白、葉の赤と緑が混在して面白い景色となった。年を越えてまだ葉も落ちずにいるので、なんだかお目出度い気分がして、新年初めの月の花にしてみた。(2015.1.1)


綿の紅葉(横浜)

綿の実と紅葉(横浜)

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 12月の花 ワイルド・ストロベリー

「野のイチゴ」ではあるけれど、食べられると思っていた。ところが、色だけは紅いのだが、やや細長い実は小さくて甘いとは言えない。花は苺らしい白い五弁の花である。花期は夏とあるので、いずれ咲き終われば消えるものと思って、プランターから地に下して放っておいた。それが、12月になっても咲き続け紅い実さえつけている。調べてみると、宿根で「蝦夷の蛇苺」という別名を持っていた。それで、春の野にあるヘビイチゴのように食べられるが味がないのも納得した。(2014.12.1)


ワイルドストローベリーの花(横浜)

ワイルドストローベリーの実(横浜)

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 11月の花 猫の髭

英語名はキャッツフイスカー、文字通り「猫の髭」である。近くに二つある園芸店は同じ通りに面しているので、よくはしごをする。一つは盆栽や花木など鉢物を得意としていて、もう一つの方は草花や野菜の苗など種類が豊富である。猫の髭は、ここのサルビア・コーナーのようになっているところにあった。サルビア、カラミンサ、レウカンサ、ホットリップス、セージなどすべてシソ科で、シソ科の植物は花期も長く花の形や色も多彩である。猫の髭と葉の形は似ているが、ゴマノハグサ科のブルーキャッツアイというのもあった。こちらは「猫の眼」で、青い花びらを虹彩に、中心にある白色を瞳に見立てたのであろう。(2014.11.1)


猫の髭(横浜)

ブルーキャッツアイ(横浜)

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 10月の花 

萩といえば秋の七草で、薄とともにお月見の団子に添えて飾るのは知っていたのだが、さてそれがどんな萩だったかというと曖昧である。多分、赤紫色のマメ科の形の花が枝にびっしりと付いて、枝垂れるという印象なのだが、それは宮城野萩というらしい。それで、宮城だから仙台萩などと思っていた。しかし、センダイハギは先代萩と書いて歌舞伎がゆかりであるというし、花の形は似ているが黄色であった。伊那谷の中川村にある蕎麦屋に寄ったとき、内庭に見事な萩の一叢があった。白い萩もあったが、それは錦萩という萩の白花で種類が違うらしく、萩もなかなかに区別が難しい。(2014.10.1)


宮城野萩(中川村)

白萩(中川村)

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 9月の花 フウセンカズラ

ゴーヤとか朝顔を緑のカーテンにするのが、今どきの省エネで流行りである。なかにはキュウリを使った実用的な向きもあるが、キュウリは実をつけ終わると枯れてしまう。近くに、フウセンカズラをグリーン・カーテンに仕立てている家があり、なかなかに涼しげであった。初夏に咲く白い花は小さくて目立たないが、実の方は薄緑色の紙風船のようで、わずかな風にもそよぐのが風流で涼を呼ぶのであろう。(2014.9.1)


フウセンカズラの花(横浜)

フウセンカズラの実(横浜)

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 8月の花 鬼アザミと島アザミ

「山には山の愁いあり 海には海の悲しみや」の歌詞で知られる「あざみの歌」に、「くれない燃ゆるその姿」とあるのは赤紫色の野アザミであろうか。アザミも種類が多く、種類によって咲く時期もまちまちで春から秋にかけて咲く。一年中咲いているのもあるらしい。先日初めて通った神保町の小路の空き地に、人の背丈ほどもある洋種ヤマゴボウやミソハギ、ススキに混じって、オニアザミの群落があった。沖縄の友人が写真を送ってきてくれたシマアザミは白花で、3月から5月に咲く春の花であるという。(2014.8.1)


鬼アザミ(神保町)

島アザミ(沖縄)

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 7月の花 ハルジオンとヒメジョオン

春から夏にかけて道端によく咲いている野草なのだが、長く区別がつかないままに過ごしてきた。ハルジオン、あるいはハルシオンは春に咲いて、ヒメジョオンはその小型かと思っていたのだが、ハルジョオンとも言いヒメジオンとも言ってごちゃまぜにしていたようである。それが春紫苑であり、姫女苑という漢字名があって、花の蕾のつき方がちがうというのがわかったのは最近である。同じキク科であるが、春紫苑の花期は春で蕾のときは下向きにつくのに対して、姫女苑は春から夏にかけて咲く上に、蕾は初めから上に向くという。(2014.7.1)


春紫苑(横浜)

姫女苑(信州、甲斐大泉)

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 6月の花 鉄砲百合

庭の片隅に毎年テッポウユリが咲いていたのだが、根ミツバが生い茂って消えてしまった。それで新たに球根を三つほどもとめて、アジサイとヤマボウシの木の間に埋めておいたのだが、そのまま忘れていた。今年そのうちの二つが芽を出し、一つが花をつけた。テッポウユリはほかの百合とちがって花が筒型で先の方が半分ほど開く。別名琉球百合とあるように沖縄の野山には普通に咲いていて、何年か前に訪れた辺戸岬の高台の原に見事な群落があった。(2014.6.1)


テッポウユリ(横浜)

テッポウユリ(沖縄、辺戸岬)

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 5月の花 八重桜

甲州と信州の桜は、横浜とくらべると1か月ほど遅い。四月の終わりから五月のはじめに信州の山小屋に行くと、こちらではとうに散ってしまった桜をもう一度見ることができる。それは、花だけでなく野菜も旬の時期がずれるので、筍なども二度たのしむことができるのは、信州の提携農家から直接野菜をいただいている特権というものであろう。信州からの帰りに、よく甲斐大和村の天目庵に寄って蕎麦を食べるのであるが、そこに見事な八重桜が咲いていた。隣に咲いていた桜も見事であったが、山桜であろうか。(2014.5.1)


八重桜(甲斐大和)

天目庵の桜(甲斐大和)

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 4月の花 蓮華と紫華鬘

レンゲとムラサキケマンは、花の色が紫がかっていて似ていると思っていたのだが、よく見ると花の形もつき方も葉の形もちがう。レンゲはマメ科でムラサキケマンはケシ科であった。雑草で楽しむ庭造りが人気らしいが、わが家の庭にも一角があり、ツクシ(スギナ)、タンポポ、カラスノエンドウ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、クローバー、ムラサキツユクサ、ヒメヒオウギズイセン、タネツケバナ、ペンペングサなど多彩である。そこに昨秋レンゲの種を播いておいたのが、この春に花を咲かせた。それで分かったのであるが、レンゲは夜になると花びらが水平になり寝るのである。日が高くなると花びらが起き上がって花冠をつくる。(2014.4.1)


レンゲ(横浜)

ムラサキケマン(信州、八千穂)

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 3月の花 踊子草

神田神保町からお茶の水に登る男坂という急階段がある。古い手すりがあり、その脇が草地になっていて、見ると面白い形をした花があった。紫がかった薄ピンクの花がぐるりと茎を囲んでいて、ドガの描く「 踊り子」のスカートがひろがっているように見えたのであるが、一つ一つの花をよく見ると、花笠をかぶり団扇を手にした踊り手のようでもある。どうやら名前はこちらに由来しているらしい。近くに白花のものもあった。(2014.3.1)

「今月の花」は十二年目に入り、今月で132号となった。しかし、ここでとりあげた花の数は二百をやっと越えたほどで、星の数ほどある花の種類に比べれば、まさに大海の水の一滴、浜の砂子の一粒でしかない。さりながら、花と出合いその姿を写真に収めるというのも一期一会と思い、いましばらくは続けてみようと思っている。(2014.3.1)

オドリコソウ、ピンク(東京、神田)

オドリコソウ、白(神田)

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 2月の花 タネツケバナ
早春に咲いてすぐ種をつけるからなのかと思っていたが、苗代の準備に種籾を水に浸けておく頃に咲くので「種浸け花」とあった。白い小さな花や姿はナズナ(ぺんぺん草)とそっくりな感じがするが、よく見ると葉の形がちがう上に、実の形がまるでちがう。タネツケバナの実は細い莢状なのに対して、ペンペングサの方は三角で三味線の撥の形をしている。三味線のペンペンという音ではないが、穂を採って振ると、熟して固くなった実がぶつかり合ってシャラシャラと音がする。(2014.2.1)

タネツケバナ(横浜)

ペンペングサ(横浜)

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1月の花 ピラカンサス
冬になると花よりも木の実の方が目立つようになる。マンリョウ、ハナミズキ、ナンテンなどの実は鮮やかな紅で目を引く。中でもピラカンサスの実は深紅で、枝がしなうほどたわわに付くので一層目につく。餌場の少ない冬で一番に鳥の目に入ると思うのだが、争って食べているようには見えない。まずいのであろうか。花の咲くのは4月から5月で、白い小さな花が枝が見えなくなるほどびっしりとつく。因みに、ピラカンサスはピラカンサの複数形のようにみえるが、ピラカンサ自体がいくつかの属の総称のようなので、ピラカンサでよいという向きもある。(2014.1.1)

ピラカンサスの花(横浜)

ピラカンサスの実(横浜)

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 12月の花 大文字草
昨夏に植木市で買った2株を半日蔭のところに植えておいたら、茗荷の葉が覆いかぶさって1株は消えてしまった。残った株は地面にへばりつくようにしていたが、茗荷の茎と葉が枯れて地に伏したあと、花穂を持ち上げたのが12月に入ってからであった。ユキノシタ科で花期は秋とあったが、なかなかに強い。花は5弁で、下の2枚がやや大きくて長いので、名前の通り漢字の大という字の形をしている。似た花に春から初夏に咲くユキノシタ(雪の下)があるが、こちらもランナーを次々に伸ばして旺盛である。(2013.12.1)

大文字草(横浜)

大文字草、ピンク(横浜)

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 11月の花 エノコログサ
エノコログサはどこにでも生えてくる雑草である。五穀の内の粟がこの草を作物化したものであることはあまり知られていないが、そもそも現在の作物自体が野生の植物から作られたものなのである。実をつけた穂が子犬のしっぽに似ているので「犬ころ草」で、それが訛ったものらしい。「猫じゃらし」という名もある。穂の色や形に変種があり、普通は穂も葉と同じ緑なのだが、穂先が金色のものはキンエノコロ、紫がかったものはムラサキエノコロ、大きな穂のものはオオエノコログサ(アキノエノコログサ)とか呼ばれている。(2013.11.1)

キンエノコロ(信州、八千穂)

ムラサキエノコロ(信州、八千穂)

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 10月の花 綿
 ワタとの付きあいは長い。日本綿業振興会が綿の種プレゼントというのを毎春やっていて、興味を抱いて申し込んだことがある。もう28年も前のことであるが、その時は土か水やりがまずかったのか見事に失敗して発芽もしなかった。それで、ほかにも悔しい思いをしている向きもあろうかと、 『はじめての綿づくり』という本をつくった。それ以来毎年栽培して楽しんでいたのであるが、この何年かやめていた。今年、すぐ近くの「オッカラン」という輸入雑貨のお店の女主人が興味を示してくれて、ワタの種プレゼント付きで綿の本を置いて売ってくれたこともあり、久しぶりに種を播いた。女主人も鉢植えで栽培して、花が咲き実が吹くまでの成長の過程をブログに載せるというので、気合が入った。幸いに双方とも順調に花が咲き実をつけ、9月には桃(綿の実)が吹いた。(2013.10.1)

ワタの花(横浜)

ワタの実(横浜)

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 9月の花 待宵草
 宵待ち草とも月見草とも呼ばれているが、それは通称で本名は待宵草とある。帰化植物で荒蕪地を好むらしくあっという間に全国に広まった。それでいて、セイタカアワダチソウのように嫌われていないのは、夕方に咲いて月を見、朝にはしおれる黄色の可憐な花が日本人の感性に合ったのであろうか。マツヨイグサ、オオマツヨイグサ、コマツヨイグサ、メマツヨイグサと種類があるというが、咲いている時には区別がつかない。目にするのは大体がオオマツヨイグサらしい。(2013.9.1)

大待宵草(信州、佐久穂町)

大待宵草(信州、佐久穂町)

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 8月の花 ヒマワリ
 ヒマワリは強い日差しの中で咲く夏の花である。向日葵と書くがアオイ科ではなくキク科で、花が太陽に向くというのも生長の過程だけらしい。人の背丈を越えて、てっぺんに一つだけ大きな花をつけるのが代表的なものであるが、小ぶりな花を沢山つけるものや八重のものなど種類も多い。以前に植えたことがあり種が残っていたのか、梅の木の下に芽を出して一つだけ花をつけた。右は、信州の山小屋の下の畑に栽培されていた向日葵。種をとるのであろうか。(2013.8.1)

ヒマワリ(横浜)

ヒマワリ(信州、佐久穂町)

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 7月の花 ペチュニアとサフィニア
 庭には洋種の草花では地植えのマーガレットとサルビアくらいしかなかったが、鉢植え用にペチュニアとサフィニアの苗を一株ずつ買ってみた。花鉢に植えると旺盛に枝葉をひろげて、鉢の縁からあふれるように花をつける。どちらもナス科でよく似ているが、ペチュニアの方が花は大きい。サフィニアは小ぶりだが多数枝分かれして、沢山の花が盛り上がるように咲く。ペチュニアの一品種で名前の由来がサーフ(寄せ波)から来ているというが、商品名であろうか。(2013.7.1)

ペチュニア(横浜)

サフィニア(横浜)

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 6月の花 山法師
 ヤマボウシはミズキ科で、花の形はハナミズキ(アメリカヤマボウシ)とよく似ているが、花弁(本当は苞)の先が尖っていて花の色も白だけである。花期も6月に入ってからで、薄黄緑の苞がだんだん白くなってゆき下旬には木全体が真っ白になる。咲き終わると特徴のある実が大きくなり、秋に熟すときれいな赤色になる。食べられないわけではないが、薄甘いだけで水っぽいからであろうか鳥たちも食べに来ない。(2013.6.1)

ヤマボウシ(横浜)

ヤマボウシの実(横浜)

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 5月の花 花菖蒲
 花菖蒲はアヤメ、カキツバタ、シャガなどと同じアヤメ科で種類も多い。花びらが大振りで嫋やかなところが鑑賞用として好まれたのであろうか、野花菖蒲を改良した園芸種は江戸時代には400種を数えたという。5月の連休に一日堀切菖蒲園に遊んだことがある。菖蒲田がいくつもあり、それぞれに妍を競っていたが、色や模様に因んだ花の名が奥ゆかしくも凝っていて、中には清少納言やら王昭君などの美女の名をいただいたものもあった。(2013.5.1)

花菖蒲(堀切菖蒲園)

花菖蒲(堀切菖蒲園)

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 4月の花 ブルーベリーとジューンベリー
 花を見、実がなるのを楽しみにしているので、庭には実をつける木が多い。高くなる木では、梅、姫リンゴ、ヤマボウシ、ユズなどで、以前の庭にはスモモ、ビワ、桜桃もあった。そういう木の下に、グ―スベリー、ブラックベリーなどの低灌木を植えた。花は目立たないが、ジャムにするためである。ジューンベリーとブルーベリーは新参で、玄関の道の両側に植えた。どちらも四月には花を咲かせるが、実が熟すのは前者はその名の通り六月、ブルーベリーは種類によって少しちがうが、六月から七月である。(2013.4.1)

ブルーベリー(横浜)

ジューンベリー(横浜)

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 3月の花 クリスマス・ローズ
 クリスマス・ローズは花の少ない冬に咲くからと、一昨年の秋に庭に3株ほど植えたのだが、クリスマスの時に株もとにのぞいた花芽と思ったものは、新しく出る葉の芽で一向に咲かなかった。そのはずで、英語名のクリスマス・ローズはニゲル種でこちらは冬に咲くが、一般に流布しているのはちがう種で春咲きクリスマス・ローズ(レンテンローズ)というらしい。花は地味な色のものが多く下向きに咲くが、それを奥ゆかしいと見る向きもある。今月初めに3株とも花をつけた。(2013.3.1)

春咲きクリスマス・ローズの蕾(横浜)

春咲きクリスマス・ローズの花(横浜)

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 2月の花 花大根
 大根も畑に放っておかれると春に花を咲かせる。白い花は十字花でアブラナ科とわかる。紫の花のものはムラサキダイコンなどと勝手に思っていたのだが、花大根という別種であった。ムラサキハナナ(紫花菜)という別の名も持っていて、それが電車の走るわきのノリ斜面一面に咲いているときなど見事である。2月の下旬、根津のあたりを散歩していたとき、崖の下の空き地が陽だまりになっているところがあり、一面を埋め尽くすように花大根が咲いていて驚いたことがある。白花のものもあるというが、まだ見たことはない。(2013.2.1)

今号(120号)で「今月の花」も満10歳になった。100号(2011年6月、タチアオイ)の時にいささか感慨めいたものを記した覚えがあるが、それからなにか変ったということもないので、このままひと月づつやってゆければよいかと思っている。

ハナダイコン(根津)

ダイコンの花(横浜)

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 1月の花 ヘツカリンドウ
 冬至を過ぎ、ツワブキの花も終わると庭の草花の花はウィンターコスモスとヴィオラぐらいになってしまう。ところが一月になって、沖縄の友人からヒカンザクラの開花のたよりとともに、美しい小さな花の写真が届いた。ヤンバルの林道の縁に咲いていたという。それまで見たこともない花で、ヘツカリンドウという名前も特別な感じである。ヘツカは辺塚という地名に由来しているらしく、大隅半島から南西諸島では普通に見られるという。大体は五弁の細い花びらの先が濃い紫で、その下に黄色の玉模様があって可憐である。それが、花の色、形、大きさに少しづつ違いがあって、40ものバリエーションを数えるとあった。(2013.1.1)

ヘツカリンドウ(沖縄、ヤンバル)

ヘツカリンドウ(沖縄)

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 12月の花 八つ手
 ヤツデの花は初冬に咲く。花期は長く一月まで咲いている。花は球状になったものが、いくつも集まって大きな葉の間から出てくる。別名、天狗の葉団扇といわれるのは、天狗が手にしているのが八つ手の葉だからなのであろうが、深く裂けた葉は天狗の手のようでもある。裂けた葉の数をかぞえてみると、だいたいは八つと見たのであろうが、横浜では七つ手も九つ手もあった。実が黒く熟すのは春になってからである。(2012.12.1)

ヤツデの花(横浜)

ヤツデの実(横浜)

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 11月の花 ヨウシュヤマゴボウ
 日本のヤマゴボウに対してアメリカヤマゴボウと呼ばれるが、どちらも毒草である。荒れ地になるとどういうわけか生えてくる。白っぽい小さな花が穂状につくが、実が熟すと毒々しい黒紫色になる。山菜として食用にしているのは、ヤマゴボウと呼んではいるがモリアザミのことで、信州では高原の畑で栽培している。この根をよく洗って味噌漬けにしたり、醤油と味醂をあわせたものに漬けると絶品である。ヤマゴボウはヤマゴボウ科、ゴボウとアザミはキク科でややこしい。(2012.11.1)

ヨウシュヤマゴボウ(横浜)

ヨウシュヤマゴボウの実(横浜)

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 10月の花 ヤブラン
 近くの歩道にヤブランが縁取りとして植えられていた。紫の小さな花が穂状になっているのは、同じユリ科のツルボによく似ているが、細く長い葉が密である。黒い実をつけるが、鳥が運んだものであろうか、前に住んでいた家の庭にも芽が出て花をつけたことがある。花は紫のものが多いが、白花のものが園芸店にあった。珍しいので一株もとめて庭の縁石のそばに植えた。(2012.10.1)

ヤブラン(横浜)

ヤブラン(横浜)

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 9月の花 トリカブト
 トリカブトは烏帽子の形をした青い美しい花を咲かせる。しかし日本三大毒草のひとつで、この毒を使った事件を伏線にした文芸作品にしばしば登場する。山野に自生するが、水のあるところを好むらしく、沢筋や湿地に群落をなすことが多い。花の色は青一色ではあるが、濃い青のものや青の薄いものもある。北八ヶ岳の麦草峠から縞枯山に登るコースが好きで、夏の終わりによく行くのだが、茶臼山と縞枯山の鞍部から南に下って山腹を巻くあたりに見事な群落がある。(2012.9.1)

トリカブト(信州、北八ヶ岳)

トリカブト(北八ヶ岳)

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 8月の花 夾竹桃
 夏の炎天下に元気に咲いている花木といえば、このあたりではムクゲとサルスベリ、ノウゼンカズラ、キョウチクトウであろうか。この地に引っ越してきたばかりの時は、隣地との境にヒバの幼木が目印に植えられているだけであったが、ウメ、スモモ、桜桃など少しづつ樹木を植えていった。そのなかに夾竹桃もあった。樹勢の強い木であっという間に何本も株立ちして、道路の方にかぶさるほどであった。後で知ったのであるが、この木は有毒な成分を含んでいるので、公園でも植栽されなくなったという。しかし、キョウチクトウ科のニチニチソウなどの植物には、キョウチクトウスズメというスズメガがつく。迷彩をほどこした戦闘機の翼のような翅を持ったカッコイイ蛾なのであるが、まだ実際には見たことがない。ほかのスズメガはゴーヤなどにも来るが、一度見てみたいものである。(2012.8.1)

キョウチクトウ、紅(横浜)

キョウチクトウ、白(横浜)

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 7月の花 紫蘇
 紫蘇は夏のものである。季語は晩夏で7月から8月上旬であろうか。たしかに梅が熟して、梅干しや梅漬けにつかう赤紫蘇はそのあたりに店頭に出る。青紫蘇も夏のものだが、栽培ものなのであろうか年中出まわっている。赤紫蘇も青紫蘇も花期は秋である。庭の青紫蘇はどういうわけか、12月になっても新しい枝にあおい葉を茂らせ花まで咲かせている。コクテールというツルバラの株のまわりに毎年自生するのであるが、トマトとニラ、キューリとネギ、ナスとバジルがコンパニオン・プラントと言われるように、共栄植物なのであろうか。(2012.7.1)

アオジソ(横浜)

アカジソ(横浜)

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 6月の花 アヤメ
 立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、などと女性の容姿をよく花にたとえるが、「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」もその例であろう。美しさの甲乙をつけがたいことをいうのであろうが、実際にもアヤメ、ショウブ、カキツバタ、イチハツなどアヤメ科の花の区別はややこしい。水辺に生えているかとか、花の形状とかで判断するのであるが、アヤメは花片の基部に虎斑があるのでわかりやすい。小型の三寸アヤメにもちゃんと虎斑がある。(2012.6.1)

アヤメ(横浜)

三寸アヤメ(横浜)

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 5月の花 ラン
 ランは香リ高く美しい花を咲かせる。世界的に愛好者が多いらしく、毎年「世界のラン展」が東京ドームで開かれている。鉢植えのプチミネルヴァというランを3年前の冬にいただき、花が終わったので外に出してそのまま忘れていた。手入れもなにもしていなかったので、2年ほど葉だけが茂っていたのだが、昨年の冬に蕾をつけているのを見つけて中に入れた。それが花柄の下から順々に咲いていって、まだ咲いている。右の写真は、沖縄の友人が満開になったと送ってきてくれたイリオモテランで、沖縄海洋博記念公園の熱帯植物園にあるものと兄弟株であるという。(2012.5.1)

ラン、プチミネルヴァ(横浜)

イリオモテラン(沖縄)

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 4月の花 ハナミズキ
 アメリカから来たのでアメリカハナミズキと思っていたのだが、アメリカヤマボウシが別名で、ハナミズキで十分らしい。日本からサクラを贈った返礼として贈られてきたことはよく知られている。今年がその100周年で、それを記念してワシントンで3月25日から4月まで大々的なサクラ祭りがあった。白花と赤花があり、花びらも大きく目立つので、街路樹として随分と植えられている。秋に紅葉し、真っ赤な実も美しい。(2012.4.1)

ハナミズキ、赤(横浜)

ハナミズキ、白(横浜)

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 3月の花 タンポポと菜の花
 春に咲く黄色の野の花といえば、先ず思い浮かぶのはタンポポと菜の花であろうか。いま目にするタンポポはほとんどが西洋タンポポであるが、昔ながらの関東タンポポもわずかながら残っている。どこからか持って来た土の中に種子が混じっていたのか、庭に関東タンポポが出てきた。花のガクが下に反らずに上を向いたままである。菜の花はもともと畑にあったものが、なかば野生化してあちこちに飛んでいる。鶴見川の河岸にも大きな群落があった。(2012.3.1)

タンポポ(横浜)

菜の花(横浜、鶴見川)

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 2月の花 馬酔木
 アセビともアシビとも読まれるが、有毒植物で、馬が好物だから酔うのではなく苦しむということらしい。春もっとも早く咲く花木のひとつで、秋に実をつけてすぐに翌年の蕾を準備している。横浜で咲くのは3月であるが、沖縄の友人がリュウキュウアセビが咲いたと写真を送ってきてくれた。花の形はほぼ同じであるが、花のつき方が少しちがうようである。猫の好物でマタタビ(木天蓼)というのがある。こちらはほんとうに猫が涎を出すらしい。さしずめ、ヒトにとってのアルコールということになろうか。(2012.2.1)

リュウキュウアセビ(沖縄)

アセビの蕾(横浜)

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 1月の花 ウィンター・コスモス
 昨秋、長年飼っていた犬が大往生したので、庭の片隅に埋葬して墓をつくった。たまたま家に大きな瑪瑙の原石があり、木の株を伐った載せ台もあった。それを墓石にして、まわりにウィンター・コスモスを植えた。ひょろひょろだが、次々に新しい枝穂を出して薄黄色の花を絶え間なく咲かせた。花期は夏から秋とあったが、冬になってもまだ咲いている。コスモスの仲間と思っていたら、センダングサの仲間で、花が散ったあとの姿はアメリカ・コセンダングサにそっくりであった。(2012.1.5)

ウィンター・コスモス(横浜)

ウィンター・コスモス(咲いたあと)

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 12月の花 小菊
 初冬になり咲き誇っていたホトトギスが終わると、庭の花はツワブキ、大文字草、八つ手ぐらいで、クリスマスローズはやっと小さな蕾をもちあげたばかりである。そのなかで寒さに強い菊は、晩秋から冬のさなかまで咲き続けてくれる。大輪、中輪の菊も見栄えがあってよいが、展示会用の感じである。やはり庭には小菊の方が風情があるように思われる。小菊は強く、いま咲いている花の根元には早くも次の年のための新しい葉が顔をのぞかせている。(2011.12.1)

小菊(横浜)

小菊(信州、八千穂)

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 11月の花 秋明菊と秋海棠
 秋も深まり朝夕の気温が下がってくると、ミズヒキ、コスモスなど草花の花の色も一段と冴えてくるように見える。前に住んでいた家の桜桃の木の下に、秋明菊を植えたのだが、木の枝がこんでくるにつれて花をつけなくなってしまった。キンポウゲ科で陽当たりを好むらしい。それに比べると秋海棠は半日蔭が良いらしく、ベゴニアらしい可憐な花を咲かせる。菅井農業小学校を主宰しておられた児童文学作家の今西裕行先生は、この花がお好きでよくスケッチをされていたのを思い出す。先生が亡くなられて七年の歳月が流れようとしている。(2011.11.1)

秋明菊(横浜)

秋海棠(横浜)

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 10月の花 金木犀と銀木犀
 あまい香りが際だつ花木といえば、春は沈丁花、秋は金木犀であろうか。芳香が辺りを漂うと思わずその木に目が行く。子どものころ遊んだ小学校の運動場の隅に大きな金木犀の木があり、秋になると木全体が金色になって、その下に行くと噎せるようなあまい香りに包まれた。匂いは記憶と強く結びついているらしく、いまでもその情景が一瞬にしてよみがえる。銀木犀は一昨年鉢植えから地に下ろしたもの。黄白色の花で香りも控え目である。(2011.9.30)

金木犀(横浜)

銀木犀(横浜)

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 9月の花 サルビア
 サルビアは花の色が鮮やかな上に、花期が長く煉瓦の色との相性もよいので、花壇によく植えられている。山小屋に行くときにいつも清里から野辺山を通るのだが、道の両側に絨毯のようにびっしりと敷き詰められ真っ赤であった。サルビアというと真紅の花と思っていたが、シソ科で花の形も色も多彩で種類が多い。以前、庭に青いサルビアがありブルーサルビアと勝手に思い込んでいたが、メドウ・セージと呼ばれるサルビアで背丈も花も大きかった。(2011.9.1)

サルビア(信州、野辺山)

メドウ・セージ(横浜)

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 8月の花 ジュズダマ
 ジュズダマはその名の通り、数珠にする玉のように固い実を沢山つける。子どもの頃、川辺に行っては熟して固くなった実を採って、糸を通して腕輪にしたり、布きれに包んでお手玉にしてもらって遊んだ。光沢のある実は、白いのやら黒いのやら一つ一つ違っていて美しい。近くにある畑の脇の水路に生えていて、8月の終わりに花をつけた。花の根元がふくらんでいたのですぐ実がなると思っていたら、それは苞で始めはやわらかく、10月から11月に実が熟すと固くなる。(2011.8.1)

ジュズダマの花(横浜)

ジュズダマの実(横浜)

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 7月の花 キンカン
 キンカンと同じ柑橘類のユズや夏ミカンの花は5月に咲くが、キンカンの花は遅く、いつまでも咲かないので忘れていると、7月の暑い日に枝の先々にポチポチと白い蕾がついてそれと気づく。花は小ぶりではあるが、形はミカン類と同じである。咲くのが遅い分、実が金色になるのは年を越して1月である。お正月のお節料理には金柑の砂糖煮が定番で入っている。色が綺麗で食べ合わせも良いのであろう。実は小さいが果皮の甘味が強く、子どものころは生のまま皮を囓るおやつでもあった。(2011.7.1)

キンカンの花(横浜)

キンカンの実(横浜)

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 6月の花 タチアオイ
 立葵は花穂がどんどん上に伸びて背丈を越すほどになり、いっぱいに付いた蕾が下から順に咲いてゆく。夏の強い陽射しの中の立ち姿がよいのが人気があるゆえんであろうか。花の色も赤、ピンク、臙脂、黄色、クリーム、白と多彩である。農家の庭によく見かけるが、英国の田園風景にもタチアオイは欠かせないらしく、女流版画家スー・スカラードの「タチアオイ」というシリーズには、農家の前景にかならずタチアオイの群落が描かれている。そのなかの一点が木魂ギャラリーに展示されている。

「今月の花」は2003年3月から始めて今回で100回になった。この間、一回も欠かすことがなかったのは、健康に恵まれたということになろうか。あと何回とか決めずに、とりあえずは続けてゆこうと思っている。(2011.6.1)

タチアオイ(横浜)

タチアオイ(横浜)

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 5月の花 カタバミ
 カタバミは子どもの頃から足下にいつもあったので、この年になるまで注目はしてこなかった。なにも生えてこれないような乾燥した土でも真っ先に出てきて、地面をハート型をした葉で覆う。根はびっくりするほどしっかりと張っている。空き地から移植したクローバーの方が強いと思っていたのだが、どうしてどうして外来種同士でも順位があるとみえる。黄緑の葉のものが多いが茶褐色の葉の種もあり、どちらも真っ黄色の星形のかわいい花をつける。庭にシジミチョウが多いのは、カタバミの葉が食葉のせいなのであった。ムラサキカタバミは葉も花も少しおおぶりで、こちらはやや日陰を好むようである。(2011.5.2)

カタバミ(横浜)

ムラサキカタバミ(横浜)

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 4月の花 スルガダイニオイ
 4月になると木花が一斉に咲き出す。中でも持てはやされるのはやはり桜であろうか。サクラも種類が多いが目にするのは大抵がソメイヨシノかオオシマザクラである。神田小川町にはスルガダイニオイ(駿河台匂)という珍しいサクラが街路樹として植えられているが、咲き出すのは遅く葉が出るのと花が咲くのが一緒になる。オオシマザクラの一種であるが、原木が駿河台にあったとかで、名のごとく花に芳香がある。(2011.4.1)

スルガダイニオイ(千代田区、小川町)

オオシマザクラ(横浜)

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 3月の花 スミレ
 早春に咲く野草で姿かたちの可憐さでいえばスミレであろうか。スミレは小さいハート型の葉を出すか出さないうちに蕾も伸びてくる。咲き終わると葉も茎もぐんぐん大きくなり、夏には20センチを越すほどである。10年ほど前に知人から株分けしてもらったスミレが、どんどん広がって庭のあちこちに出てきた。タチツボスミレであろうか。ヤンバルに行った沖縄の友人がリュウキュウコスミレの写真を送ってきってくれた。1月に咲いていたという。(2011.3.1)

スミレ(横浜)

リュウキュウコスミレ(沖縄、宮城邦昌氏撮影)

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 2月の花 木瓜の花
 早春の花木は梅、木瓜(ボケ)、沈丁花、アセビ、ユキヤナギなどが先駆けとなるが、立春を過ぎてつぼみがふくらんでくるのは先ず沈丁花、それからボケであろうか。アセビは昨年のうちからつぼみをつけているが、咲くのは3月に入ってからである。ボケの実は大きく、ごつごつしているがカリンのような芳香がある。信州で地梨と呼ばれているクサボケ(草木瓜)も小ぶりのまるい実をつけ、地元では焼酎に漬けて地梨酒にする。(2011.2.1)

ボケの花(横浜)

アセビの蕾(横浜)

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 1月の花 茶の花
 茶の花もサザンカと同じツバキ科なので秋から冬に咲く。沖縄島の最北端の村落「奥」は茶の栽培で知られているが、ヤンバルの山間に茶畑があり1月でも咲いているという。中旬になるとスモモ、タイワンウメの白い花が満開になり、下旬から2月はじめにヒカンザクラが満開になる。各地で桜祭りがあり賑やかとなる。沖縄ではサクラといえばヒカンザクラ、梅といえばこのタイワンウメの白梅で紅梅は見かけない。気候のせいなのであろうか。理由は不明という。(2011.1.1)

茶の花(沖縄、奥)、宮城邦昌氏撮影

タイワンウメ(沖縄、大湿帯)、宮城邦昌氏撮影

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 12月の花 
 秋も深まると、あちこちで菊花展が始まる。菊は沢山の種類があり、とても覚えきれるものではないが、大菊、中菊、小菊と花の大きさで先ずは分けているようである。これらは観賞用に栽培されているもので、野菊との対比で里菊とか家菊とかいうらしい。いままで庭に菊は植えてこなかったのであるが、初冬まで咲いてくれるのでこの秋に少し植えてみた。左が日本の固有種であるハマギク。右がサガギクで、佐賀菊かと思っていたら嵯峨菊で京都嵯峨の出自という。(2010.12.1)

ハマギク(横浜)

サガギク(横浜)

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 11月の花 藍タデ
 藍の種を知人からもらったので、5月ころ庭のはじの方に播いた。葉が茂って10月になってから花穂が出た。藍も蓼なのでアカマンマに似ているが、花も葉も大ぶりである。花は桜蓼に近いかもしれない。生葉でも藍染めはできるが、藍は葉を乾燥してから発酵させて「すくも」にする。「藍をたてる」というのは、これをアルカリで還元して染液を作るのである。染液は茶緑色をしているが、布を浸して引き上げ竿にかけて空気に触れさせると青色になる。これを何回か繰り返すのである。(2010.11.1)

アイタデ(本蓼)(横浜)

アカマンマ(犬蓼)(横浜)

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 10月の花 セイタカアワダチソウ
 セイタカアワダチソウは嫌われ者のようである。北米原産の帰化植物で、養蜂業者が移入したという。びっしりと房状に黄色い花をつけ、根からは他の植物の発芽を抑止する物質を出すらしく、あっという間に全国を席巻した。アキノキリンソウ(別名アワダチソウ)と同じくキク科で、一つ一つは小さい花でよく見たことはなかったが、間近に見てみるとそれなりに可愛い花なのである。あまりに繁茂するので嫌われたのであろうか。(2010.10.1)

セイタカアワダチソウ(横浜)

セイタカアワダチソウ(横浜、鶴見川)

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 9月の花 ツリフネソウ
 信州の山小屋に行く途中に行きつけの蕎麦屋があり、お昼はたいていそこで蕎麦を食べる。その蕎麦屋は自前の蕎麦畑を持っていて、そのすぐ下に小川が流れている。連れていった犬がまだ若かったころ、喜んで水の中に入ってご機嫌であった。その岸辺にツリフネソウの群落があった。半日陰を好むらしく、水の流れと相俟って涼しげな趣であった。園芸店でツリフネソウの鉢植えがあったのをもとめて、ひと株を木の下の地に下ろした。秋遅くまで咲いていたが、今年はこぼれた種から発芽したのが、7月から咲いている。右は山小屋の近くに咲いていたキツリフネ。(2010.9.1)

ツリフネソウ(信州)

キツリフネ(信州)

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 8月の花 蓮の花
 蓮の花が極楽浄土のイメージとつながるのは、仏や菩薩が座す蓮台が蓮の花を模しているからであろう。蓮は真夏の炎天下に池面を大きな葉で埋め尽くして、その間からこれまた大きな花を開いて壮観である。近くにあった農家の蓮田は冬になるとレンコンを採っていたのだが、土を盛られて畑地になってしまった。レンコンは切ると断面は穴だらけであるが、花の咲いた後の大きな実も蜂の巣のように穴があいていて奇異な感じである。それで、ハスのことをハチスともいうらしい。右は、古代の種から甦った有名な大賀ハス。(2010.8.1)

近くの蓮田(横浜)

大賀ハス(清水祺子氏撮影)

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 7月の花 オニユリ
 正月用に買っておいた百合根があったのを、すっかり忘れていて、気がついた時には球根から芽が5センチほど伸びていた。陽に当たらなかったので芽は真っ白だったが、土に埋めると緑になってきた。1本はつぼみも付けずに枯れたが、1本は随分遅くやっと花をつけた。鮮やかな朱色の花びらに黒い斑がある。それほど大きくはないので、コオニユリと決め込んでいた。ところが、ムカゴが付くのがオニユリ、付かないのがコオニユリと知ったのはその後のことで、花姿の大きさではなく、ムカゴが付いていたのでオニユリなのであった。(2010.7.1)

オニユリ(横浜)

オニユリのムカゴ(横浜)

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 6月の花 ツル日日草
 日日草とツル日日草は、種がちがうのではないかと思うくらいに、葉のつき方も花の色もちがう。日日草は一年草で花の色も、赤、ピンク、白と多彩であるが、ツル日日草は宿根で菫色に近い青である。フランスの詩人ランボーの瞳の色は、ツル日日草の青であったと伝えられている。また、日日草と花の形がよく似ているインパチェンスというのがある。沖縄の本部半島に遊んだとき、道の両側のあちこちに自生の群落があった。日日草の仲間かと思っていたのだがツリフネソウ科で、日日草はキョウチクトウ科であった。(2010.6.1)

ツル日日草(横浜)

インパチェンス(沖縄、本部半島)

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 5月の花 野菜の花
 野菜の花は目立たないが、それなりに美しい。なかでもエンドウの花はマメ科らしい暗紅紫色の華やかな花である。トマト、ナス、ジャガイモはナス科。キュウリ、カボチャ、スイカなどはウリ科。菜の花、キャベツ、ダイコンなどはアブラナ科と、それぞれに味わいの違う花を咲かせる。であるから、その野菜が何科なのかは花を見ればわかる。レタスやサンチュなどは、アキノノゲシのような花を咲かせるのでキク科とわかるのである。(2010.5.1)

エンドウの花(横浜)

ソラマメの花(横浜)

 4月の花 藤の花
 桜が終わるとずっと暖かくなり、藤の花の季節になる。近くの公園に藤棚があり、風があると長く垂れた花房が揺れる。「柳生武芸帖」などの剣豪小説をものした五味康祐の受け売りであるが、何事につけ垂れ下がるとか下がるというのを嫌ったのが武士で、葡萄の図柄をブドウ(武道)が下がるとしたり、紫の風呂敷は首を包むものとして忌んだという。それに比して、桜の散り際を潔しと愛でたのは、武士の覚悟を重ねてみたからであろうか。(2010.4.1)

藤(横浜)

藤(横浜)

 3月の花 ハナニラ
 ハナニラは形の良い花びらと爽やかな色で早春の道端を彩る。長い間その名前を知らずにいた。花びらが星の形をしているので、スタードロップスとか勝手に名づけていたが、当たらずと言えども遠からずであったか、英語名はスプリングスターフラワーとあった。ニラはユリ科で、ヒガンバナ科と同様、球根がどんどん増えていって群落を成す。葉は普段目立たないが、花は一斉に咲くので遠くから目を引く。花びらは白から、青みがかったもの、青が強く出るものなどさまざまなようである。(2010.3.1)

ハナニラ(横浜)

ハナニラ(横浜)

 2月の花 銭のなる木
 「銭のなる木」というのは、その名もあって人気があるらしい。呼び方のヴァリエーションも、銭の木、(お)金のなる木、クラスラなどと多い。ベンケイソウ科でクラッスラ・ボルツラケア、園芸名を黄金花月と調べはついた。花の少ない冬に咲くのも、人気がある理由かもしれない。ベンケイソウといえば、子どもの頃お腹に出来物ができたときなど、肉厚の葉を炙って皮をむいて貼ってもらったものである。左は毎冬行く信州の商店に見事に咲いていたもの。右は今年初めて花をつけた庭の鉢植え。(2010.2.1)

銭のなる木(信州)

銭のなる木(横浜)

 1月の花 立ち寒椿と浜沈丁
 立ち寒椿を庭に植えた。以前にあったのは寒椿で、横に枝を張って上にはあまり伸びないが、立ち寒椿は反対に上に伸びて、枝は横に張らない。ただ、花はほとんど変わらないように見える。冬の最中に咲くのも同じである。沖縄で冬に咲くというハマジンチョウ(浜沈丁)の花の写真を友人からいただいた。沖縄県の天然記念物で、南城市の佐敷の海岸に大群落があるという。葉のつき方も花の大きさも沈丁花と似ているが、花は白系統と紫系統があり、花びらにホトトギスの斑があって愛らしい。(2009.12.29)

立ち寒椿(横浜)

浜沈丁(沖縄、宮城邦昌氏撮影)

 木魂ギャラリーの中に、フォトギャラリーを開設しました。「今月の花」では、原則として毎月一つだけ 取りあげるつもりです。読者諸兄の目をいささかなりとも楽しませることができれば幸いです。文と写真 は社主の鈴木和男が担当します。(2003.3.15)



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